- 実務経験証明以外の方法で、建築一式工事の専任技術者になる方法はあるの
- 建築士以外で、建築一式工事の専任技術者になる国家資格はあるの・・・
- 建築一式工事と施工管理技術検定について、詳しく教えて欲しい・・・
建築一式工事を含む建設業許可の取得要件に、「専任技術者を営業所ごとに常勤で置いていること」という重要な要件があります。
そして、この専任技術者(専技)は誰でもなれるわけではありません。
一般建設業許可(建設業法第7条第2号)と特定建設業許可(建設業法第15条第2号)に許可を区分した上で、厳しい許可基準を課されています。
専任技術者の許可基準
<専任技術者の許可基準>
専任技術者 | 一般建設業(建設業法第7条第2号) | 特定建設業(建設業法第15条第2号) |
全ての営業所に右のいずれかに該当する専任の技術者がいること。 | 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し、次に掲げるいずれかの要件に該当する者
イ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し学校教育法による高等学校(旧中等学校令による実業学校を含む)若しくは中等教育学校を卒業した後五年以上又は大学(旧大学令による大学を含む)若しくは高等専門学校(旧専門学校令による専門学校を含む)を卒業した後三年以上実務の経験を有する者で在学中に国土交通省令で定める学科を修めた者 ロ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して十年以上実務の経験を有する者 ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した者 |
許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し、次に掲げるいずれかの要件に該当する者
イ 第27条1項の規定による技術検定その他法令の規定による試験で許可を受けようとする建設業の種類に応じ国土交通大臣が定めるものに合格した者又は他の法令の規定による免許で許可を受けようとする建設業の種類に応じ国土交通大臣が定めるものを受けた者 ロ 第7条2号イ、ロ、又はハに該当する者のうち、許可を受けようとする建設業に係る建設工事で、発注者から、直接請け負い、その請負代金の額が政令で定める金額以上であるものに関し二年以上指導監督的な実務経験を有する者 ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者 |
上記の表は、建設業法の条文に沿った記載になっているため、とてもわかりづらいことと思います。
この表を読むのが難しい方は、一旦読み飛ばしていただいても良いです。
ここでは、専任技術者(専技)になれる技術者の基準について、大きく「実務経験による者」と「国家資格による者」があるということを理解していただければ良いと思います。
実務経験証明による建築一式工事取得の困難さ
建築一式工事の専任技術者(専技)について、技術者としての経験を実務経験で証明しようとする場合、とても難しく煩雑な手続となってしまいます。
その理由は大きく2つあります。
<工事内容の該当性>
一つ目は、実務経験証明に使いたい工事の内容が本当に建築一式工事に該当するのか、その判断がとても難しいことです。
建築一式工事は、原則として元請業者の立場で「総合的な企画、指導、調整」の下に建築物を建設する工事とされています。
更に、複数の下請業者によって施工される大規模かつ複雑な工事とされています。
東京都では、建築一式工事について建築確認申請を必要とする新築および増改築工事と例示しています。
概して、建築一式工事の内容について「総合的な企画、指導、調整」という抽象的な記載となっているため、携わった工事が建築一式工事に当てはまるのか、大変わかりづらくなっています。
<書面による証明>
二つ目としては、仮に、経験した工事内容については建築一式工事に該当していたとしても、そのことを書面で証明しなければならないということです。
建設業許可を取得していない建設業者様が専任技術者(専技)の技術者としての実務経験を証明する場合、特にハードルが高くなっています。
と言うのも、工事業種の内容が建築一式工事と明確にわかる工事請負契約書、注文書・注文請書、請求書等の写しを提出しなければならないからです。
しかも、行政庁によっては、期間通年分の原本提示を求められています。
つまり、指定学科等を卒業していない技術者を建築一式工事の専任技術者(専技)としたい場合には、10年分の工事請負契約書、注文書・注文請書、請求書等の原本提示を必要とするのです。
以上のケースのように、建築一式工事の専任技術者(専技)を実務経験で証明しようとすると、大きな労力を必要としています。
そのため、建築一式工事の取得に際し、専任技術者(専技)を国家資格者から準備される建設業者様がいらっしゃいます。
というのは、国家資格者の場合、その合格者証や免許証の写を提出するとともに、合格証や免許証の原本を提示するだけで技術者としての要件を満たすことができるからです。
建築一式工事の建設業許可を取得できる国家資格
では、建築一式工事の専任技術者(専技)となれる国家資格にはどのような資格があるのでしょうか。
<建築士資格>
一級建築士や二級建築士と言った国家資格を思い浮かべる方がいらっしゃると思います。
これらは建築士法に定められている国家資格です。
一級建築士や二級建築士の資格をお持ちの技術者を専任技術者とすることで、建築一式工事の建設業許可を取得することができます。
ちなみに、建築一式工事の特定建設業許可を取得しようとする場合、一級建築士の資格者を準備する必要があります(指定建設業)。
尚、同じ建築士であっても木造建築士は大工工事の専任技術者になれますが、建築一式工事の専任技術者にはなれません。
<施工管理技士資格>
その他の国家資格として、建設業法に定められた「技術検定制度」があります。
この技術検定に合格すると、施工管理技士と称することができます。
「一級建築施工管理技士」か「二級建築施工管理技士(建築)」の技術検定に合格すれば、建築一式工事の専任技術者(専技)になることができます。
次段では、施工管理技士検定の制度の趣旨や概略についてご説明いたします。
施工管理技士制度について
建設工事の施工技術の高度化、専門化、多様化の進展は著しく、建設工事の円滑な施工と工事完成品の品質水準の確保を保つため、施工管理技術は重要な役割を担っています。
そのため、建設業法は、建設業者に対して施工技術の確保の義務を課すとともに(建設業法第25条の25)、積極的に技術の向上を図る制度として「技術検定制度」を採用しているのです(建設業法第27条)。
この「技術検定制度」は、建設工事に携わる者の施工技術の向上を目的としており、技術検定に合格した者は、「一定水準以上の施工技術を有する者」と公的に認定された技術者となります。
従って、建設業許可制度では、技術検定の合格者については、その区分や種目に応じ、営業所に常勤で置かれる専任技術者(専技)や現場に置かれる配置技術者(主任技術者・監理技術者)の資格要件を満たす者とされます。
建築一式工事の専任技術者となれる施工管理技士
では、建築一式工事の専任技術者(専技)となれる施工管理技士には、どのようにすればなれるのでしょうか。
「技術検定制度」の概要を見て行きましょう
※令和3年度制度改正により、技術検定制度が大きく変更されています。
本テーマについては最後の朱字記載をご確認願います。
<検定の種目等>
技術検定の種目と検定で求められる技術について確認します。
種目:建築施工管理検定技術:建築一式工事の実施に当たり、その施工計画及び施工図の作成並びに当該工事の工程管理、安全管理等工事の施工の管理を適確に行うために必要な技術
技術検定は、一級と二級に区分され、二級建築施工管理は、建築・躯体・仕上げの種別に細分化されています。
二級建築施工管理の場合、建築一式工事の専任技術者になれるのは、種別が「建築」の場合に限定されます。
<技術検定の方法>
技術検定試験は、一級、二級とも以下の科目について、4肢択一式の学科試験と記述式の実地試験によって行われます。
◎一級建築施工管理技術検定試験
種別:-学科試験科目:建築学等 施工管理法 法規実施試験科目:施工管理法
◎二級建築施工管理技術検定試験
種別:建築学科試験科目:建築学等 施工管理法 法規実地試験科目:施工管理法
<受験資格(概略)>
◎一級施工管理技士検定試験
(1) 学科試験
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(2) 実地試験
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その他、二級建築士試験合格者+実務経験や二級建築施工管理技術検定合格者+実務経験等の受験資格もあります。
従って、実際に受験する際には、受験資格の詳細について、事前に試験実施機関等に確認する必要があります。
◎二級施工管理技士検定試験
(1) 学科試験・実地試験
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その他、学科試験免除者等の規定もあります。
従って、受験資格の詳細については、事前に試験実施機関等に確認する必要があります。
※実務経験年数
建築一式工事において現場施工・施工管理・総合管理・設計管理・施工監督に従事した経験を言います。
研究所・学校・訓練所等における研究・教育および指導等は含まれません。
※指定学科
国土交通省令で定めている学科等を言います。
国土交通省や試験実施機関である一般財団法人建設業振興基金等のHP等で確認することができます。
※高度専門士・専門士
専門学校専門課程で所定の要件を満たし、文部科学大臣が認めるものを終了した者は高度専門士または専門士と称することができます。
<試験実施機関>
建築施工管理技士検定については、「一般財団法人建設業振興基金」が試験実施機関となっています。
※令和3年度制度改正~施工管理技術検定は制度が大きく変わっています。
1 試験の構成は、旧制度(学科試験・実施試験)から新制度(第一次検定・第二次検定)に変わっています。
2 また、第一次検定合格者に『技士補』資格が付与されます。
3 令和3年度以降の第一次検定合格については生涯有効な資格になります。
4 そのため国家資格として『1級建築施工管理技士補』『2級施工管理技士補』と称することになります。
尚、試験制度の詳細については、「一般財団法人建設業振興基金」にご確認をお願い致します。
建築一式工事と施工管理技士制度(まとめ)
ここまで、専任技術者の実務経験による証明の難しさに触れた上で、施工管理技士制度の趣旨や概要についてご説明してきました。
建築一式工事の建設業許可を取得したい建設業者様にとって、建築施工管理技士を準備することによって、迅速かつ確実に建築一式工事の建設業許可を取得できる可能性が大きく高まるのです。
最後に、記事のまとめとして、建築施工管理技士の資格取得の3つのメリットについて、確認しておきます。
<資格取得メリット>
- 「施工管理技士」は、一般建設業・特定建設業の許可要件の一つである営業所ごとに置く専任技術者(専技)・建設工事の現場に置く配置技術者(主任技術者・監理技術者)の有資格者として認定されます。
- また、建築一式工事を含む指定建設業においては、特定建設業を取得する場合、営業所に置く専任技術者(専技)・建設工事の現場に置く監理技術者は、一級施工管理技士等の国家資格者等を必要とします。
- 更に、経営事項審査における技術力の評価においても、施工管理技士は計上する技術者にカウントされ、施工技術の指導的技術者として社会的に高い評価を受けます(評点の加点評価)。
弊事務所では、建築一式工事の建設業許可申請でお困りの建設業者様からのご相談を積極的にお受けしております。
建築一式工事の建設業許可申請でお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。