- 特定建設業者は、施工体制台帳や施工体系図を必ず作成するのですか
- 一般建設業者は、施工体制台帳や施工体系図の作成義務はないよね・・・
- 民間工事でも、施工体制台帳や施工体系図を作成しないといけないの・・・
- 公共工事の元請業者は、施工体制台帳や施工体系図の作成は必要なの・・・
建設工事の特徴として、ゼネコンから専門工事業者まで、元請、下請、孫請といった重層構造で工事施工されていることがあげられます。
従って、適正かつ効率的な工事施工のためには、元請業者が工事現場ごとに、下請業者、孫請業者等工事にかかわる全業者の状況や技術者の設置等(施工体制)を的確に把握しておく必要があります。
そのため、建設業法は、元請業者に対して工事現場ごとに施工体制台帳や施工体系図を整備するよう求めています。
建築一式工事の元請業者・特定建設業者としての責任
建築一式工事は、「原則として元請業者の立場で総合的な企画・指導・調整の下に建築物を建設する工事であり、複数の下請業者によって施工される大規模かつ複雑な工事」とされています。
従って、元請業者として建築一式工事を請け負う場合、その工事の性質上、さまざまな専門工事業者と下請契約を結ぶことになります。
更に、建築一式工事の元請業者として専門工事業者に発注する工事の総合計額が7,000万円(建築一式工事以外では、4,500万円)以上になると、特定建設業の許可を取得する必要も出てきます。
元請業者で、特定建設業者となった場合、自らが下請契約を締結した一次下請業者にとどまらず、二次以降の下請業者に対しても建設業法上の責任を有することになります。
ここでは、元請業者で、特定建設業者となった場合に課される下請業者の管理・監督について、施工体制台帳や施工体系図の整備の観点から概略をご説明させていただきます。
施工体制台帳や施工体系図の整備
建設業法は、発注者から直接請け負った建設工事を一定額以上(建築一式工事は7,000万円、それ以外の工事は4,500万円)の下請契約を締結して施工しようとする特定建設業者に対し、施工体制台帳や施工体系図の作成を義務付けています(建設業法第24条の7)。
※注 公共工事については、元請業者であれば特定・一般建設業者とも、下請契約の金額の大小に関わらず、施工体制台帳の作成とその台帳の写しの発注者への提出を義務付けられています。(入札契約適正化法第15条第1項、第2項)。
建築一式工事の施工体制台帳
施工体制台帳は、下請業者、孫請業者等の工事を請け負う全ての業者名、各業者の施工範囲、各業者の技術者名簿等を記載した台帳のことを言っています。
元請業者は、この施工体制台帳の作成を通じて、工事現場の施工体制を的確に把握することになります。
<施工体制台帳の目的>
- 『品質、工程、安全などの施工トラブルの発生防止』
- 『不良、不適格業者の参入、建設業法違反(一括下請負等)の発生防止』
- 『安易な重層下請による生産性の低下の防止』
<施工体制台帳の備え置き等>
また、施工体制台帳は、建設工事の目的物を発注者に引き渡すまでの期間、工事現場ごとに備え置いている必要があります。
そればかりか、施工体制台帳の一部は、備え置き期間を経過後、帳簿(建設業法第40条の3)の添付書類として保存しなければなりません(5年間又は10年間)。
また、特定建設業者(元請業者、下請契約の総合計額が建築一式工事では7,000万円、それ以外の工事では4,500万円)は、発注者からの請求により、施工体制台帳を発注者に閲覧させなければなりません。
建築一式工事の再下請負通知書
特定建設業者(元請業者、下請契約の総合計額が建築一式工事では7,000万円、それ以外の工事では4,500万円)は、下請業者に対して再下請負通知をしなくてはならない旨、通知する必要があります。
その上で、工事現場の見やすいところに、元請業者の名称と再下請通知書の提出先を掲示します。
<再下請通知の流れ>
施工体制台帳の作成される工事の専門工事を担当する下請業者が、さらにその工事を孫請業者に再下請した場合、その再下請の工事の内容、工期等を、元請業者に通知(再通知)することが求められます。
その際には、下請業者は孫請業者に対しても、元請業者の名称や再下請負通知をしなければならない旨、再下請負通知書の提出先を通知する必要があります。
元請業者は、孫請業者等から再下請負通知書が提出されるよう、下請業者や孫請業者等を指導する必要があります。
建築一式工事の施工体系図
特定建設業者(元請業者、下請契約の総合計額が建築一式工事では7,000万円、それ以外の工事では4,500万円)は、施工体制台帳や下請業者等の再下請通知を基に、各下請業者の施工分担関係を示す施工体系図を作成しなければなりません。
また、施工体系図は、工事現場の見やすい場所に掲示する必要があります。
尚、公共工事については、工事現場の工事関係者の見やすい場所と公衆の見やすい場所に施工体系図を掲示する必要があります。
<施工体制台帳の備え置きと施工体系図の掲示>
施工体制台帳の備え置きと施工体系図の掲示については、原則として、発注者から請け負った建設工事の目的物を発注者に引き渡すまで行わなければなりません。
建築一式工事と施工体制台帳(まとめ)
ここまで、元請業者で、特定建設業者となった場合に課される下請業者の管理・監督について、施工体制台帳や施工体系図の整備の観点から概略をご説明させていただきました。
元請業者や特定建設業者には、下請業者の管理・監督を含む現場の施工について、大きな責任を課されていることをお分かりいただけたと思います。
<施工体制台帳の目的>
- 『品質、工程、安全などの施工トラブルの発生防止』
- 『不良、不適格業者の参入、建設業法違反(一括下請負等)の発生防止』
- 『安易な重層下請による生産性の低下の防止』
弊事務所では、建築一式工事の建設業許可を取得したいとお考えの方からのご相談を積極的にお受けしております。
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