建設業の配置技術者制度

  • 現地へ配置する技術者は、技術者であれば誰でも良いの
  • 主任技術者と監理技術者では、資格要件や役割が異なるの・・・
  • 特定建設業者は、監理技術者を必ず現場に配置しないといけないの・・・
  • 出向者や派遣社員でも、主任技術者や監理技術者になれるの・・・

建設業許可の重要な要件として、「専任技術者を営業所ごとに常勤で置いていること」という要件があります。

専任技術者の設置は、取引の中心である契約の適正な締結と履行を確保するためで、個別具体的な建設工事の施工に直接携わることを主な目的としていません。

従って、建設工事の適正な施工の確保には、専任技術者(専技)とは別に、施工現場に、請け負った工事業種について一定の施工実務の経験や資格を持つ技術者を置き、工事施工の技術上の管理をさせる必要があります。

では、どうしてそのような施工管理を行う技術者を現場に配置する必要が出てきたのか、配置技術者の意義と配置技術者制度の概要についてご説明いたします。

※本記事の最後に令和2年10月1日の建設業法改正に伴う「建設現場の生産性の向上」に対する施策について簡単にご説明しております。

建設業の配置技術者制度の意義

建設業には、他の産業とは少し異なる、「建設生産物の特性」や「施工上の特性」があります。

<建設生産物の特性>

  • 一品受注生産物であるためあらかじめ品質を確認できない
  • 不適正な施工があったとしても完全に修復するのが困難である
  • 完成後には瑕疵の有無を確認することが困難である
  • 長期間、不特定多数の人々に使用される

<施工上の特性>

  • 総合組立生産であるため、下請業者を含めた多数の者による様々な工程を総合的にマネージメントする必要がある
  • 現地屋外生産であることから工程が天候に左右されやすい

そこで、建設業法は、建設工事の適正な施工を確保するために、工事現場における建設工事の技術上の管理をつかさどる者の設置を義務付けているのです。

その工事現場における建設工事の技術上の管理をつかさどる者は、建設工事の種類、請負金額、施工における立場(元請・下請)等に応じて、主任技術者と監理技術者に区分されています。

では、建設工事の施工に関する一定の資格や経験を持つ主任技術者や監理技術者とはどのようなものなのでしょうか。

主任技術者の設置基準

建設業法第26条第1項は、建設業の許可業者は、元請・下請業者を問わず請け負った建設工事を施工する際に、その工事現場における技術上の管理をつかさどる者として、主任技術者を置く必要があるとしています。

この主任技術者を置く必要がある場合とは、一般建設業や特定建設業の工事現場において、次の3つのケースとなっています。

  1. 下請業者を使用しない場合
  2. 下請契約の請負代金総額4,500万円(建築一式工事の場合、7,000万円)未満の工事を下請施工させる場合
  3. 他の建設業者の下請として工事を施工する場合

主任技術者の資格は、一般建設業の営業所ごとに置く専任技術者の資格や経験と同一のものになります。

また、主任技術者の職務は、建設工事の施工にあたり、施工計画を作成し、具体的な工事の工程管理や工事目的物、工事用資材等の品質管理を行うことにあります。

加えて、工事の施工に伴う公衆災害等の発生を防止するための安全管理も重要な職務となります。

監理技術者の設置基準

建設業法第26条第2項は、元請である特定建設業者が、その建設工事を施工するために締結した下請金額の請負代金総額が4,500万円(建築一式工事の場合、7,000万円)以上になる場合、その工事現場における技術上の管理をつかさどる者として、監理技術者を置く必要があるとしています。

監理技術者の資格は、特定建設業の営業所ごとに置く専任技術者の資格や経験と同一になります。

ただし、指定建設業(土木工事業・建築工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業)については、許可基準と同様、一級国家資格者等に限定されています。

監理技術者の職務は、建設工事の施工にあたり、施工計画を作成し、具体的な工事の工程管理や工事目的物、工事用資材等の品質管理を行い、工事の施工に伴う公衆災害等の発生を防止するための安全管理を行うことにあります。

また、監理技術者は、建設工事の施工に際し、下請業者を適切に指導監督するという総合的な役割も持つことにもなります。

<指導監督的な実務経験>

監理技術者の資格認定として、指定建設業を除いて、指導監督的な実務経験という基準があります。

この指導監督的な実務経験とは、建設工事の設計又は施工の全般において、工事現場主任者又は工事現場監督者のような立場で工事の技術面を総合的に指導した経験のことを言っています。

従って、この経験には、発注者の側における経験又は下請負人としての経験を含めることはできません。

指導監督的な実務経験として認められるのは、許可を受けたい建設業の業種に係る建設工事で、元請業者として請負代金の額が4,500万円以上である工事に限定されています。

配置技術者の工事現場の専任

建設業法第26条第3項は、請負金額が4,000万円(建築一式工事の場合、8,000万円)以上の「公共性のある施設または多数の者が利用する施設もしくは工作物に関する重要な建設工事(建設業法施行令第27条第1項に規定する工事)※」について、主任技術者又は監理技術者を工事現場ごとに専任することとしています。

この場合の専任とは、他の工事現場の主任技術者又は監理技術者との兼任を認めないという意味です。

従って、原則、専任の主任技術者又は専任の監理技術者を常時継続的に建設工事現場に置く必要があります。

更に、主任技術者と監理技術者については、直接的かつ恒常的な雇用関係にある必要があり、在籍出向者や派遣社員では認められません。

※国および地方自治体の工事や鉄道、道路、学校、工場、デパート等多数が利用する施設などの工事で、個人住宅を除き、民間工事を含めてほとんどの工事を対象とします。

建設業の配置技術者制度(まとめ)

ここまで、配置技術者の意義と配置技術者制度の概要についてご説明してまいりました。

このテーマを記事にした理由は、建設業者様より建設業許可取得のご相談を受けた際、現場の配置技術者について誤解されているのでは、と感じることが多くあったからです。

また、過去の工事経歴書を見せていただいた際にも、同様の感想を持つことが多くありました。

今回の記事をお読みいただいて、建設業の配置技術者制度に対する理解を深めていただければと思っております。

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※<現場代理人(ご参考)>

建設業者様の中には、現場代理人と専任技術者や監理技術者を混同される方がいらっしゃいます。

現場代理人は、請負人の代理人として、請負契約の適切な履行を確保するため、工事現場に常駐し、現場の運営、取り締まり、工事の施工と契約関係事務に関する一切の事項を処理します。

従って、現場代理人は、現場において請負人の任務を代行する者であり、専任技術者・監理技術者とは別個の者となります。

ただし、現場代理人と主任技術者や監理技術者との兼任は認められています。

※<建設業法改正に伴う建設現場の生産性の向上>

1 元請建設業者に対して

(1) 監理技術者の専任緩和

監理技術者補佐を専任で置いた場合、元請建設業者の監理技術者の複数現場(現在は2現場)の兼務が可能になります。

(2) 元請建設業者の監理技術者を補佐する制度の創設

技術検定試験が学科と実地を加味した第1次と第2次検定に再編成されています。

第1次検定の合格者に技士補の資格が付与されます。

それを受け、主任技術者の要件を満たす者のうち、1級技士補の資格を有する者を監理技術者補佐とすることができます。

2 下請建設業者に対して

(1) 専門工事一括管理施工制度の創設

次の要件を満たす場合、下請業者の主任技術者の設置が不要となります。

但し、主任技術者を置かない下請建設業者(二次下請)の上位の下請建設業者(一次下請)に一定の指導監督的実務経験を有する者を専任配置する必要があります。

① 一式工事以外の一定の金額未満の下請工事(現在は型枠工事と鉄筋工事)

② 元請建設業者が注文者の承諾と下請建設業者の合意を得ること

③ 下請建設業者から更なる下請契約は禁止

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