建設業許可と後継者問題

  • 社長一人が取締役だけど、建設業許可について何か問題があるの
  • 社長が経営業務の管理責任者と専任技術者を兼務しているけど、将来、困ることがあるの・・・
  • 経営業務の管理責任者と専任技術者の許可基準が良く分からない・・・

国土交通省の「建設業構造実態調査(有効回答17万社以上)」によると「建設業の経営上の課題」について、「後継者問題」を課題とする割合が高まっています。

建設業の後継者問題

具体的な数字を挙げると、「後継者問題」を経営上の課題と挙げる割合は、2008年度では約20%、2011年度では30%弱、2014年度では40%弱と右上がりになっています。

更に、「後継者問題」を課題とする建設企業の推移を見てみると、小規模な建設企業ほど、「後継者問題」を課題と認識している割合が高くなっています。

具体的には、資本金1億円以上の建設企業では20%強、1千万円以上1億未満では30%強、1千万未満では40%弱、個人では50%弱となっています。

また、中小企業庁の「中小企業白書(2017年度)」では、事業承継をめぐる中小企業の現状について調査を行なっています。

例えば、「年代別にみた中小企業の経営者年齢の分布」によれば、中小企業の経営者の年齢について、過去20年間で大幅に高齢化していることがわかります。

経営者の年齢層のピークは、1995年における50~54歳の層から2015年には65~69歳の層にまで上昇しています。

更に、「事業承継を完了するまでに要する期間」によれば、事業承継については、後継者の選定を始めてから了承を得るまで3年以上の期間を要した企業が約40%を占めています。

これらの統計からも建設企業の置かれている環境、「後継者問題」の姿を垣間見ることができると思います。

建設業許可と後継者問題

また、建設企業の「後継者問題」を考える上の重要な視点として、建設業許可の継続を挙げることができます。

建設業許可を新規に取得したり、継続・更新したりするためには、厳しい許可基準を満たさなければなりません。

この厳しい許可基準の中でも、特に、常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))と専任技術者(専技)については、「後継者問題」と密接に関係しており、建設業許可の取得や継続・更新の肝となっています。

経営業務の管理責任者と専任技術者と後継者問題

なぜなら、建設業許可を取得・継続・更新するためには、常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))と専任技術者(専技)を1日たりとも欠いてはならないからです。

言い換えれば、常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管)等)と専任技術者(専技)は、その建設業者様の社内に必ず1名以上いなければならないのです。

従って、許可業者様の後継者については、常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))としての経営経験や専任技術者(専技)としての技術者経験を有している必要があります。

ここで特に問題となるのは、常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))についてです。

常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))の要件(概要)をおさらいしておきましょう。

経営業務の管理責任者の許可基準

常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))は、先ず、許可を取得しようとする建設業者様の役員(ここでは取締役と考えておきます)でなければなりません。

その取締役が、建設業に関して、5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を持っていなければなりません。

つまり、常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))になるには、建設業に関して5年以上の経営経験を有していなければならないのです。

確かに、令和2年10月1日に建設業法の改正で、常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))を置くこと以外に、建設業に関する「経営体制(常勤役員等と常勤役員を直接に補佐する者)」を整えることで常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管)」に変えることができる制度もできています。

ただ、中小の建設業者様にとって、複数の人材を事前に建設業法の想定する「経営体制」に組み込んでおくことは、現実的には大変難しいものになっています。

そのため、常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))については、やはり、純粋に経営業務に関する経験を積む方法を志向せざるを得ないようです。

そうなると、とにもかくにも、許可基準に定められている年数の経過が必要となってきます。

従って、将来的にご子息やその他の方に建設会社を引き継がせたい場合、それら常勤役員等(経営業務の管理責任者)の候補者をあらかじめ取締役に就任させておく手立てをやはり必要とします。

専任技術者の許可基準

専任技術者(専技)については、例えば、一般建設業許可の場合、次のような許可基準を満たしておかなければなりません。

大学や高校等の指定学科を卒業後、許可を得ようとする業種について一定期間の実務経験を持っていなければなりません。

また、許可を得ようとする業種について10年以上の実務経験を持っている場合でも基準を満たすことになります。

これらの場合、今までその業種に携わった実務経験を工事請負契約書等の書面で証明できる状態にしておく必要があります。

もうひとつの基準として、許可を得ようとする業種について、定められた資格を持っていることを挙げることができます。

この場合、後継者や他の常勤の従業員に必要となる資格を取得させておくという対策になります。

これらの手立てや対策を講じていない場合、建設業許可を取得したり、継続したり、更新したりすることができなくなるリスクを負うことになります。

後継者問題の許可への影響

例えば、とある許可業者の社長様が常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))と専任技術者(専技)になっておられたとします。

この社長様に不測の事態が発生し、業務を行なえなくなってしまった場合、後継者の手立てや対策を講じていないと困ったことになってしまいます。

つまり、この許可業者様の建設業者としての力量に何ら問題がなかったとしても、常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))や専任技術者(専技)になれる方がいない場合、建設業許可を失ってしまうのです。

その結果、500万円以上(含む消費税、建築一式工事の場合は1,500万円)の建設工事の完成を請け負えなくなり、経営上の死活問題となってしまいます。

建設業許可と後継者問題(まとめ)

ここまで、建設業許可と後継者問題について、建設業許可の維持・継続といった観点からご説明してきました。

許可業者様においては、建設業許可の維持・継続を考えた場合、事業承継の数年前から後継者対策を講じておく必要があるのです。

後継者対策を放置すると、場合によっては、建設業許可までも失ってしまい、事業の存続を危うくする可能性もあります。

弊事務所では、建設業許可について、人的・組織的・物的・財産的要件の確認から必要書類の収集、申請書の作成、行政庁への提出まで、手続全般をサポートしております。

「後継者問題」とも深く関係している、常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))や専任技術者(専技)の許可基準等でお悩みの建設業者様は、お気軽にご相談ください。

※建設業許可の事業承継・相続について(ご参考)

令和2年10月1日から、建設業許可に関する事業承継と相続に関する制度が新設されています。

改正前の建設業法では、建設業者が事業譲渡・合併・分割と言った事業承継を行う際は、従前の建設業許可を廃業し、新たに建設業許可を新規申請する必要がありました。

この場合、建設業者様は、廃業日から新しい許可日までの間、契約金額500万円以上(建築一式工事では1,500万円以上)の建設業を営むことはできません。

今回の改正建設業法では、建設業者様は、事業承継を行う場合、予め事前の認可を受けることで、空白期間を生むことなく、承継者(譲受人、合併存続法人、分割承継法人)は、被承継者(譲渡人、合併消滅法人、分割被承継法人。以下同じ)の建設業者としての地位を承継できるようになっています。

また、相続の場合は死後30日以内に相続の認可を受けることで、空白期間を生むことなく、相続人は、被相続人の建設業者としての地位を承継することができるようになっています。

但し、事業承継・相続の認可の審査においては、承継者や相続人となる建設業者様は許可要件等を全て備えていなけばなりません。

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