- 一般建設業許可と特定建設業許可では財産的基礎要件は異なるの
- 建設業許可の財産的基礎要件を確認する計算式の見方がわからない・・・
- 特定建設業許可の財産的基礎要件の適否はどうやって判断されるの・・・
実は、建設業許可は一般建設業許可と特定建設業許可の二つの区分に分けられています。
この許可の区分によって、許可要件として求められている財産的基礎や金銭的信用の基準は大きく異なっています。
建設業許可の財産的基礎要件
では、そもそも一般建設業許可と特定建設業許可では、何か違う点があるのでしょうか。
一般建設業許可と特定建設業許可の違いを一言で言うと、元請業者として下請業者に工事を発注できる下請契約金額の差にあります。
具体的には、一般建設業許可の場合、元請業者として総額4,000万円未満(建築一式工事の場合は、6,000万円未満)までしか下請業者に工事を発注できません。
他方、特定建設業許可の場合、元請業者として下請業者への工事の下請契約金額の制限は全くありません。
本記事では、建設業者様にとって分かりづらい一般建設業許可と特定建設業許可の財産的基礎要件について詳しくご説明いたします。
一般建設業許可の財産的基礎要件
初めに、一般建設業許可の取得や維持には、どのような財産的基礎要件を満たしていればよいのでしょうか。
一般建設業許可では、次の基準のどれかに該当すれば、許可要件を満たすことができます。
- 自己資本が500万円以上あること。
自己資本とは、法人の場合には、貸借対照表の純資産の部の純資産合計のことを言っています。
個人では、機首資本金、事業主借勘定、事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を引いた額に負債の部に計上されている利益留保金の引当金、準備金の額を加えた額のことを言っています。
- 500万円以上の資金調達能力があること。
取引先金融機関発行の500万円以上の預金残高証明書等で資金調達能力を判断されます。
この場合、証明日の1ヶ月以内が預金残高証明書の有効期限となっています。
- 建設業許可取得後5年間の営業実績(更新時)
建設業許可の更新時に、建設業者様が倒産等の不測の事態にないことが前提となっています。
決算変更届(事業年度終了報告書)を含む各種変更届について提出してある必要があります。
これによって、建設業者様は改めて財産的基礎や資金調達力の審査を受ける必要はありません。
特定建設業許可の財産的基礎要件
次に、特定建設業許可の取得や維持には、どのような財産的基礎要件を満たしていればよいのでしょうか。
特定建設業許可では、工事規模や建設工事に関係する下請業者の数が当然大きくなります。
従って、特定建設業許可の場合、一般建設業許可と比べて厳しく財産的基礎を審査されることになります。
具体的には、特定建設業許可では、一般建設業許可とは異なって許可申請直前の決算(※)において、次の全ての基準を満たしていなければなりません。
※既存企業は許可申請直近の確定した貸借対照表(定時株主総会の承認を得たもの)、新設企業は創業時における財務諸表(開始貸借対照表)によって審査されることになります。
- 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと。
欠損とは、法人の場合、貸借対照表のマイナスの繰越利益剰余金が、資本剰余金、利益準備金、その他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く)の合計金額を上回る額のことを言っています。
個人の場合では、事業主損失が、事業主借勘定から事業主貸勘定の額を引いた額に負債の部に計上されている利益留保金の引当金、準備金を加えた額を上回る額を言っています。
<事例>
① 資本金 20,000千円
② 繰越利益剰余金 △21,000千円
③ 資本剰余金 1,000千円
④ 利益準備金 5,000千円
⑤ 任意積立金 10,000千円
②21,000-(③1,000+④5,000+⑤10,000)/①20,000=25%>20%
※この例では、欠損比率が20%を超えているため、特定建設業許可の財産的基礎要件を満たしていません。
※繰越利益金がある場合や資本剰余金、利益準備金、その他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く)の合計が繰越利益剰余金の負の額を上回る場合には、既に要件を満たしているのでこの計算式を用いる必要はありません。
- 流動比率が75%以上であること
流動比率とは、流動資産を流動負債で割った結果を百分率で表したものです。
- 資本金の額が2,000万円以上であること。
資本金の額とは、法人の場合には株式会社の払込資本金、有限会社の資本の総額、合資及び合名会社は出資金額、個人の場合には機首資本金のことを言います。
尚、財務諸表で資本金の額に関する基準を満たしていなくとも、建設業許可の申請日までに増資を行うことで基準を満たすことになった場合には、基準を満たしているものとして扱われます。
この場合、商業登記簿謄本又は履歴事項全部証明書に資本金2,000万円以上の登記がなされたことで確認されます。
- 自己資本の額が4,000万円以上あること。
法人の場合は、貸借対照表の純資産の部の純資産合計のことを言っています。
個人の場合は、機首資本金、事業主借勘定、事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を引いた額に負債の部に計上されている利益留保金の引当金、準備金の額を加えた額のことを言っています。
尚、開始貸借対照表で、資本金が2,000万円以上あり、資本準備金と合わせた自己資本合計が4,000万円以上ある場合には、特定建設業許可の要件に適合していると判断されます。
建設業許可の財産的基礎要件(まとめ)
ここまで、建設業許可の重要な要件のひとつである財産的基礎要件について詳しく説明してきました。
用語が難しかったり、計算式が複雑だったりして、なかなか難しく感じられたことと思います。
ご参考までに、一般建設業許可と特定建設業許可の財産的基礎要件のポイントを挙げておきます。
先ずは、お手元にある決算書の貸借対照表を見ながら財産的基礎要件に数字を当てはめて状態を確認してください。
<一般建設業許可の財産的基礎>
- 自己資本が500万円以上あること
- 500万円以上の資金調達能力があること
- 許可取得後5年間の営業実績(更新時)
<特定建設業許可の財産的基礎>
- 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
- 流動比率が75%以上であること
- 資本金の額が2,000万円以上であること
- 自己資本の額が4,000万円以上であること
弊事務所では、建設業許可の財産的基礎要件でお悩みの建設業者様からのご相談をお受けしております。
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