- 建設業許可を取得したけど、何か義務はあるの
- 建設業許可を取得したけど、現場管理の内容も変わらないよね・・・
- 一般建設業許可と特定建設業許可では、義務の内容に違いはあるの・・・
晴れて建設業許可を取得した建設業者様は、許可を受けた工事業種について請負代金500万円(建築一式工事では1,500万円)以上の建設工事を請け負うことができます。
その反面、建設業許可業者として、許可行政庁への届出義務等の様々な義務を課されることになります。
建設業許可業者に課される主な義務
つまり、建設業許可を取得した建設業者様は、建設業の許可業者として無許可業者とは異なる重い社会的責任を持つことになるのです。
本記事では、建設業許可を取得した建設業者様に対して課される義務の中でも、最も代表的な義務のいくつかをご紹介したいと考えております。
許可行政庁への届出義務
建設業許可を取得した建設業者様は、建設業者様のある一定の事項について変更が生じた場合、許可行政庁に変更届を提出する必要があります。
この変更届は変更事項によって提出期間が定められており、提出されない場合には罰則をうける可能性もあります(建設業法第50条等)
また、必要な届出がなされない場合には、更新申請・業種追加申請・般特新規申請を受け付けてもらえません。
<届出事項と提出期間>
- 決算報告(事業年度終了後4カ月以内、毎年)
- 商号の変更(変更後30日以内)
- 営業所の名称の変更(変更後30日以内)
- 営業所の所在地、電話番号、郵便番号の変更(変更後30日以内)
- 営業所の新設、廃止(変更後30日以内)※
- 営業所の業種追加、業種廃止(変更後30日以内)※
- 資本金額の変更(変更後30日以内)
- 役員等、代表者(申請人)の変更(変更後30日以内)
- 支配人の変更(変更後30日以内)
- 建設業法施工令第3条に規定する使用人の変更(変更後2週間以内)
- 常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管)等)の変更(変更後2週間以内)
- 専任技術者(専技)の変更(変更後2週間以内)
- 健康保険等の加入状況の変更(変更後2週間以内)
- 全部廃業(廃業後30日以内)
- 一部廃業(廃業後30日以内)※
※ 専任技術者(専技)の変更を提出する場合、変更後2週間以内の届出
標識の掲示
建設業法は、建設業の営業や建設工事の施工が建設業法による許可を受けた適法な業者によってなされていることを対外的に明らかにすることを求めています。
具体的には、建設業の許可を受けた建設業者はその店舗と建設工事現場において、公衆の見やすい場所に、所定の事項を記載した標識を掲げる必要があります。
標識を掲げない許可業業者は、建設業法第55条によって10万円以下の過料に処せられることになっています。
なお、建設業許可を受けた建設業者が標識を店舗に掲げる場合の標識は、建設業法施工規則様式第28号に、建設工事の現場に掲げる場合の標識は、建設業法施工規則様式第29号にあります。
帳簿の備え付け・保存、営業に関する図書の保存義務
建設業法では、営業所ごとに営業に関する事項を記載した帳簿を備付け、かつ、その帳簿と営業に関する図書を保存しなければなりません(建設業法第40条の3、建設業法施工規則第26条)。
建設業者様は、請け負った建設工事ごとに記載事項や添付書類に係る事実が発生したとき、または明らかになったときは遅滞なく帳簿を記載する必要があります。
また、帳簿の記載事項に変更があったときも、遅滞なく、その変更があった年月日を付記して変更後の事項を記載する必要があります(建設業法施工規則第27条第1項、第2項)。
なお、帳簿の記載事項は建設業法施工規則第26条第1項、帳簿に添付しなければならない書類は建設業法施工規則第26条第2項、営業に関する図書は建設業法施工規則第26条第5項に詳細が規定されています
建設工事の請負契約の締結に関する義務
建設工事の請負契約の締結に関しては、着工前書面契約の徹底や契約書面への記載必須事項の規定等の義務があります。
請負契約に記載すべき内容の詳細については、建設業法第19条1項各号(16項目)に規定されています。
また、自己の取引上の地位を不当に利用して工事原価に満たない価格で工事契約の締結を強制する行為も禁止されています。
更に、契約後に自己の取引上の地位を不当に利用して当該工事に使用する資材等の購入先を指定し請負人の利害を害する行為についても禁止されています。
工事現場における施工体制等に関する義務について
施工現場への主任技術者等の配置義務
建設業許可を取得した建設業者様は、元請下請に関わらず、全ての施工現場に主任技術者または監理技術者を配置しなければなりません。
主任技術者とは、その建設工事に関する一般建設業許可の専任技術者(営業所に常勤)の資格要件を満たす技術者のことを言います。
また、監理技術者とは、その建設工事に関する特定建設業許可の専任技術者(営業所に常勤)の資格要件を満たす技術者を言います。
JV工事についても全ての構成員が主任技術者または監理技術者を施工現場に配置することになります。
施工現場への主任技術者等の専任配置義務
個人住宅を除くほとんどの建設工事において、建設工事の請負代金の額が4,000万円(建築一式工事では8,000万円)以上の工事に係る主任技術者または監理技術者は、その施工現場に専任となります。
また、上記の請負代金のケースでは、主任技術者または監理技術者は他の施工現場との兼務はできません。
一括下請負の禁止
建設業者様は、請け負った建設工事について他者に一括して下請する行為が禁止されています。
また、他社から建設工事を一括して下請負される行為も禁止されています。
建設業者様は、その請け負った建設工事の完成について誠実に履行する必要があります。
従って、元請負人がその下請工事の施工に実質的に関与することなく、以下に当てはまる場合には、一括下請負になってしまいます。
- 請け負った建設工事の全部またはその主たる部分について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合
- 請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の建設工事について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合
特定建設業許可業者に関する義務
<施工体制台帳・施工体系図の作成義務>
発注者から建設工事を直接請け負った特定建設業許可業者(元請)が、4,500万円(建築一式工事では7,000万円)以上を下請負して建設工事を施工する場合、その建設工事に係る全ての下請業者を明らかとする施工体制台帳・施工体系図を作成しなければなりません。
<下請負人への指導義務>
発注者から建設工事を直接請け負った特定建設業許可業者(元請)には、その建設工事に係る全ての下請業者に対する法令遵守指導のほか、法令違反を是正しない下請負人があった場合の行政庁への通報義務も課されています。
下請代金の支払いに関する義務について
下請代金の支払期日に関する義務
建設業者様は、注文者から請負代金の出来高払または竣工払を受けたときは、その支払の対象となった建設工事を施工した下請負人に対して、相当する下請代金を1か月以内に支払う必要があります。
特定建設業許可業者に関する義務
<下請代金の支払期日の特例>
特定建設業許可業者は、上記の期日または「下請負人(除、特定建設業許可業者または資本金額が4,000万円以上の法人)からの引渡し申出日から起算して50日以内」のいずれかの早い期日内に下請代金の支払をしなければなりません。
<割引困難な手形による支払の禁止>
特定建設業許可業者は、下請代金の支払いを一般の金融機関により割引を受けることが困難と認められる手形により行うことは禁止されています。
例えば、手形サイトが120日を超える手形は、割引困難な手形とみなされますので注意を必要とします。
建設業許可業者に課される主な義務(まとめ)
本記事では、建設業許可を取得した建設業者様に対して課される義務の中でも、最も代表的な義務のいくつかをご紹介しております。
建設業許可を取得した建設業者様は、建設業の許可業者として無許可業者とは異なる重い社会的責任を持っことになります。
建設業者様には、建設業の許可業者として建設業法等の法令を遵守して、これまで以上に建設業の営業や施工現場の管理に取り組んでいただきたいと思います。
弊事務所では建設業許可でお困りの建設業者様の申請書や届出書の作成等を積極的にサポートしております。
建設業許可の申請書や届出書の作成等でお悩みの建設業者様は、お気軽にご相談ください。