- 大臣許可を持っているが、支社の専任技術者が突然会社を辞めてしまった
- 支社の専任技術者が退職したが、新しい技術者を採用すればよいよね・・・
- 専任技術者が辞めただけで、建設業を廃業しなければならないの・・・
複数の都道府県に建設業の営業所を設ける場合には、国土交通大臣の許可を受けなければなりません。
つまり、建設業の場合は、営業所のある都道府県ごとに建設業許可を申請しなければならないわけではありません。
従って、国土交通大臣の建設業許可の場合、実質的に建設業許可の申請先は1か所となります(各地方整備局)。
国土交通大臣許可で支社の専任技術者が突然退職、どうなるの
何か所の窓口に足を運ぶ必要がありませんので、お忙しい建設業者様にとってある意味好都合かもしれません。
ただ、そう都合のよいことばかりではないのです。
建設業許可の場合、いくつもの許可要件や許可基準があります。
この許可要件や許可基準の中で、最も厳しいものが常勤役員等(経営業務の管理責任者等)や専任技術者(専技)を配置するということです。
特に、国土交通大臣許可の場合、そもそも建設業の営業所が複数の都道府県にまたがって存在していることを前提としています。
当然、各都道府県の営業所毎に許可要件や許可基準を満たした専任技術者(専技)を常勤かつ専任で配置しておく必要があります。
国土交通大臣許可の人的要件って、なに
例えば、東京都と神奈川県に建設業の営業所を持ちたい建設業者様は、国土交通大臣許可を取得しなければなりません。
もちろん、この場合、建設業者様は工事請負代金500万円以上(含、消費税)の建設工事を請け負いたいと考えられています(建築一式工事の場合には、1,500万円以上)。
この建設業者様の国土交通大臣の建設業許可申請を審査するのは、関東地方整備局になります。
建設業者様の取得したい工事業種は、一般建設業の管工事とします。
そして、東京都の本社を建設業法上の主たる営業所、神奈川県の支社を建設業法上の従たる営業所とします。
当然、東京都の主たる営業所には、常勤役員等(経営業務の管理責任者等)を置いておく必要があります。
合わせて、一般建設業の管工事の専任技術者(専技)も常勤かつ専任で主たる営業所に置いておく必要があります。
他方、神奈川県の従たる営業所には、常勤役員等(経営業務の管理責任者)の代りとして、例えば、請負契約締結権限を委任された建設業法施行令第3条に規定する使用人(以下、令3条の使用人)を置かなければなりません。
分かりやすく言えば、請負契約締結権限を委任された支社長と言ったところです。
ただし、専任技術者(専技)については、一般建設業の管工事を取得できる資格や経験をもった技術者を東京都の主たる営業所と同様に常勤かつ専任で置いておく必要があります。
専任技術者(専技)については、許可取得に必要となる資格や経験がない技術者では専任技術者(専技)にはなることはできません。
つまり、専任技術者(専技)においては、令3条の使用人とは異なり、権限の委任による専任技術者(専技)は存在しないことになります。
支社の専任技術者が突然退職、どうなるの
この建設業者様の神奈川県にある従たる営業所の専任技術者(専技)が突然会社を退職してしまいました。
いったいこの建設業様の持つ国土交通大臣の管工事の一般建設業許可はどうなってしまうのでしょうか。
悪いことに退職した技術者の他に神奈川県の営業所には、専任技術者(専技)になれる資格や経験を持った技術者は誰もいらっしゃいません。
このまま、何も手続を行わず、例えば、新しく専任技術者(専技)となれる技術者が入社してくるまで放っておけばよいのでしょうか。
専任技術者(専技)が退職しても神奈川県には今まで通り営業所はあると考えて、そのまま何も変わらず営業していても良いのでしょうか。
決して、そんなことはありません。
支社の専任技術者が突然退職、どうすればよいの
専任技術者(専技)は、建設業許可の重要な許可要件や許可基準のひとつです。
従って、建設業許可を取得したり維持したりするには、専任技術者(専技)を営業所に常勤かつ専任で配置しておかなければなりません。
1日でも営業所に専任技術者(専技)がいない状態(空白の状態)になってしまったら、その時点で建設業許可の要件を満たしていないことになってしまいます。
営業所における専任技術者(専技)の空白は、建設業許可の取消事由なのです。
従って、建設業者様は、万が一、営業所から専任技術者(専技)のいない状態に陥った場合、すみやかに許可行政庁に必要な手続を取らなければならなりません。
廃業しなければならないって、本当なの
では、この建設業者様は、どのような手続をとらなければならないのでしょうか。
先ずは、神奈川県の従たる営業所については、許可要件である専任技術者(専技)を欠くことになっています。
従って、関東地方整備局に従たる営業所の廃業届を提出する必要があります。
注意すべきは、そもそも国土交通大臣許可の場合、複数の都道府県に営業所を設けることを前提としていることです。
しかし、この建設業者様の建設業法上の営業所は、本社、つまり、主たる営業所1か所のみとなっています。
従って、建設業者様は、改めて東京都知事の建設業許可を新規取得しなければならなくなります。
会社から、たった1人の技術者が退職されただけで(専任技術者(専技)の空白)、会社の事業に大きな影響を及ぼすことになってしまうのです。
常勤役員等(経営業務の管理責任者等)や専任技術者(専技)といった許可の取得や維持に直結する事項については、建設業者様も、日頃より人材の育成や採用等を考えておく必要があります。
国土交通大臣許可で支社の専任技術者が突然退職、どうなるの(まとめ)
国土交通大臣許可で従たる営業所の専任技術者(専技)が突然退職された場合については、建設業者様の主たる営業所・該当の従たる営業所・該当以外の従たる営業所の状況によって必要となる手続も変わってきます。
大事に至らない変更届で対応できるケースもあれば、建設業許可そのものを一旦廃業しなければならない深刻なケースも出てまいります。
やはり、従たる営業所の専任技術者(専技)のご退職前に必要となる技術者の準備を検討しておくのが肝要となります。
それでも、従たる営業所の専任技術者(専技)が突然退職された場合は、早めのご相談をお願い致します。
弊事務所では、建設業許可に関わる新規申請・許可換え新規申請・各種変更届(専技・営業所等)・廃業届(全部・一部)等の代行を積極的に行っています。