詳説!経営業務の管理責任者の経営経験期間確認表(その1)(東京都の場合)

  • 書面の名前が工事請負契約書でないと確認書類としては認められないの
  • 注文書に注文請書がないと確認書類としては認められないの・・・
  • 工期が不明確な工事請負契約書では確認書類としては認められないの・・・

常勤役員等(経営業務の管理責任者)の経営経験の確認書類

東京都の場合、常勤役員等(経営業務の管理責任者)の建設業における経営経験を無許可期間にて証明する確認資料として次のような書類が認められています。

<確認資料>

  • 工事請負契約書の写
  • 注文書+注文請書の写
  • 請求書+入金確認(通帳等)の写

但し、注文書に発注者の押印の無い場合、請求書と同様の取り扱いになり、入金確認(通帳等)の写を必要としています。

そして、東京都の運用として、原則として上記の確認資料を1月1件用意することで1か月分の経営経験と数えられることになっています。

その前提としては、上記の確認資料の件名等で、建設業に関する工事のものであることを確認できなければなりません。

尚、常勤役員等(経営業務の管理責任者)の場合、建設業の工事業種は問われることはありません。

また、同一案件に限りますが、上記の確認資料に加えて見積書・打ち合わせ記録・工期のわかる資料を提出することで、その期間についても経営経験に含めることもできます。

経営経験・実務経験期間確認表

先程、東京都の運用では常勤役員等(経営業務の管理責任者)の経営経験の確認資料は、原則、経営経験の証明に必要となる月数分(1月1件)必要となる旨説明しました。

それでは、建設業に関し5年以上の常勤役員等(経営業務の管理責任者)としての経験を証明するためには5年×12か月=60か月分(60件)の確認資料を必要とするのでしょうか。

実は、現在の東京都の運用では60か月分の確認資料の全てを提出する必要はありません。

あくまでも5年の期間通年において経営経験を有していたことを前提としますが、東京都独自様式の「経営経験・実務経験期間確認表」を提出することで、確認書類の提出を一部省略できることになっています。

経営経験・実務経験期間確認表の基本ルール

それでは、東京都独自様式の「経営経験・実務経験期間確認表」を提出することで、どのくらい確認資料を省略することができるのでしょうか。

経営経験・実務経験期間確認表の基本ルールについて、事例を用いて簡単に説明します。

<経営経験・実務経験期間確認表の基本ルール>

  1.  証明期間の最初と最後の月については、確認資料の提出は必須
  2.  確認資料の間隔が四半期(3か月)未満であれば、その間の確認資料の提出は省略可

1の事例:

例えば、平成25年1月から平成29年12月の5年間を証明する場合、平成25年1月以前と平成29年12月以後の確認書類は必ず必要とします。

2の事例

例えば、平成25年1月と4月分の確認資料を提出すれば、2・3月分の確認資料については確認資料の提出は省略可能となります。

どうですか、「経営経験・実務経験期間確認表」を用いることで以前に比べて建設業者様のご負担は少し軽くなった印象を受けます。

「経営経験・実務経験期間確認表」の基本ルールに基づいて常勤役員等(経営業務の管理責任者)の経営経験を証明してください。

ここまでのご説明で常勤役員等(経営業務の管理責任者)の経営経験の確認書類と東京都独自様式の「経営経験・実務経験期間確認表」についてはご理解いただけたと思います。

ここからは少し応用問題を扱ってみます。

書面の名前は工事請負契約書でないと駄目なのか

代表的な確認資料のとして工事請負契約書の写を挙げられます。

事業者様に工事請負契約書の写の提出をお願いしたところ、似たような書類として工事発注合意書という書類の写を受け取りました。

契約書の名前は工事請負契約書でなければならないのでしょうか。

工事発注合意書を読んでみると「AはBに対し〇〇工事を発注し、Bは〇〇工事を受注した」とあります。

更に詳細を読んでみると「工事名称・工事現場の住所・工事内容・着工日・完成予定日・工事金額・支払条件等」も記載されています。

また、AとBの代表者による記名・押印(会社代表者印)も押印してあります。

確かに工事請負契約書としては、記載事項に何点かの不足もあります。

ただ、建設工事の内容等を確認できる程度の内容は工事発注合意書に記載されているようです。

この場合、工事発注合意書の取り扱いはどうなるのでしょか。

工事請負契約書とは異なる書面のため、常勤役員等(経営業務の管理責任者)の経営経験の確認資料としては全く認められないのでしょうか。

ご安心ください。

この程度の記載があれば、建設工事の工事内容等を確認できるため常勤役員等(経営業務の管理責任者)の経営経験の確認資料として認められます。

但し、東京都では工事請負契約書としてではなく注文書と同等とみなしているようです。

発注者の担当者印だけだと駄目なのか

上記の事例(工事発注合意書)では、常勤役員等(経営業務の管理責任者)の経営経験の確認資料への押印は会社代表者印の押印でした。

実際の取引では、会社代表者の押印に時間のかかる場合もあり、工事の事前準備や工程との関係から発注者の担当者印のみ押印されているケースもあります。

この場合、確認資料の取り扱いはどうなるのでしょうか。

担当者の押印のみの場合には、少し複雑な取り扱いとなります。

というのも押印された担当者の決裁権限の有無について改めて証明する必要が出てくるからです。

例えば、発注者の職制上の決裁権限の規定等を提出した上で、その担当者が職制上の決裁権限者であることを証明しなければならないのです。

これらを証明するには建設業者様は発注者より発注者の社内規定等をお借りする必要もあり、とても大変な証明となってしまいます。

ただし、押印された担当者の決裁権限等を証明できなくとも(=証明しなくとも)、東京都の場合、この確認資料は請求書と同等の扱いになります。

つまり、追加資料として入金確認(通帳等)の写を用意すれば、常勤役員等(経営業務の管理責任者)の経営経験の確認資料として認められるのです。

注文請書がないと駄目なのか

工事発注書(注文書)と注文請書は一対の契約書類と言えます。

通常は、建設業者様は発注書より注文書を受け取り、承諾する場合は発注者に注文請書を返すことになります。

従って、書類の性質上、受注者より発行された注文請書の原本は発注者側にわたることになります。

当然、受注者である建設業者様の手元には注文請書の原本はありません。

確かに、建設業者様の中には、注文書の原本と注文請書の控を一対の契約書類として保管されている方もいらっしゃいます。

しかし、残念なことに、注文書の原本については保管されているが、注文請書の控については保管されていない建設業者様もいらっしゃいます。

では注文請書の控のない場合は、常勤役員等(経営業務の管理責任者)の経営経験の確認資料として認められないのでしょうか。

こちらもご心配ありません。

東京都の建設業許可申請においては、注文請書の控がない場合でも、工事発注書(注文書)に発注者の代表者印の押印があれば、そのまま常勤役員等(経営業務の管理責任者)の経営経験の確認資料として認められています。

工期の日にちが不明確だと駄目なのか

工事請負契約書に工期の日にちが明確に記載されていないことが稀にあります。

工期が不明確な以上は、東京都はどのような場合においても常勤役員等(経営業務の管理責任者)の経営経験としてその工期を認めてくれないのでしょうか。

それとも、補強書類を提出することで工事請負契約書の工期の日にちを証明すれば、常勤役員等(経営業務の管理責任者)の経営経験としてその工期についても認めてもらえるのでしょうか。

これについては、補強書類によって工期を明確に証明できる場合は、工事請負契約書の写に合わせて補強書類を提出することで常勤役員等(経営業務の管理責任者)の経営経験の確認資料となりえます。

補強書類の例を挙げておきますので、参考にしてください。

<補強書類の一例>

  • 建設業者様が使用している工程表の写
  • 工事引渡証明書(工事完了証明書)の写

但し、常勤役員等(経営業務の管理責任者)の経営経験の証明に使用する工期が長期の場合、東京都より更なる追加書類の提出を求められるケースもあります。

補強書類を用いて常勤役員等(経営業務の管理責任者)の経営経験の確認資料とする場合には、東京都に事前確認を行う必要があると思います。

詳説!経営業務の管理責任者の経営経験期間確認表(その1)(東京都の場合)(まとめ)

本記事では無許可期間における「常勤役員等(経営業務の管理責任者)の経営経験の確認書類」と東京都独自様式の「経営経験・実務経験期間確認表」の基本ルールから応用問題までを詳しく説明しています。

常勤役員等(経営業務の管理責任者)は、建設業許可を取得するための最も重要な要件のひとつと言えます。

東京都の建設業許可の取得は常勤役員等(経営業務の管理責任者)の経営経験を証明できるか否か掛かっていると言っても過言ではありません。

東京都の建設業許可を取得されたい建設業者様には、しっかりと「常勤役員等(経営業務の管理責任者)の経営経験の確認書類」と東京都独自様式の「経営経験・実務経験期間確認表」を理解していただきたいと思います。

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