- 社長が経管と専技を兼ねているが、高齢で業務に支障が出ている
- 社長が経管と専技を兼ねているが、現場の事故で入院してしまった・・・
- 社長が経管と専技を兼ねているが、病気で倒れてしまった・・・
建設業者様の中には、経営も現場も強いリーダシップで引っ張り、厳しい経済環境や難しい施工現場を切り抜け、事業の責任を一身に引き受けられている男気のある社長様がいらっしゃいます。
周囲にとってはとても心強い社長様と言えるでしょう。
ただ、そんな社長様も決して不死身ではありません。
年もとられますし、施工現場で怪我をされることもあります。
また、思わぬ病気にかかり長期の入院ということも考えられます。
その時はその時とお考えの社長様もいらっしゃるかもしれません。
ただ、そんなことになったら、会社の経営、特に建設業許可の維持ができなくなる恐れもあるのです。
社長様の建設業法上の後継者の準備には、ある一定の時の経過を必要とすることがあります。
社長様が名実ともご健在のうちに手を打っておく、つまり、建設業法上の後継者を準備しておく必要があります。
※令和2年10月1日の建設業法の改正で、経営業務の管理責任者(経管)について要件が変更されています。
建設業許可を受けようとする者は、主たる営業所に常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))を置くこと、または建設業に関する「経営体制(常勤役員等と常勤役員等を直接に補佐する者)」を備えることを求められています。
本記事は、改正前の経営業務の管理責任者(経管)と同等の常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))を置くことを前提としています。
経管と専技の高齢化・事故・病気による退任対策
社長様の後継者といっても、次期社長を決めるというものではありません。
ここでお話したいのは、建設業許可における常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))と専任技術者(専技)の後継者(候補者)についてです。
建設業者様の中には、社長様お一人で常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))と専任技術者(専技)を兼ねておられるケースが少なからずあります。
この常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))と専任技術者(専技)の後継者(候補者)を予め準備しておきましょうというのが今回のテーマです。
と言いますのは、常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))や専任技術者(専技)は常勤者であることを求められており、常勤性と継続性を欠いてはいけないからです。
つまり、常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))や専任技術者(専技)を1日でも欠くようなことがあると、たちまち建設業許可を失ってしまうことになるのです。
後から準備では間に合わないのです。
本記事では、常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))と専任技術者(専技)の資格要件を踏まえ、後継者(候補者)について考えていきます。
経営業務の管理責任者(経管)の資格要件と後継者(候補者)
例えば、会社の場合、常勤の取締役のうちお一人が、建設業に関して5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を持っていなければなりません。
と言うことは、社長様以外の取締役が建設業に関して5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を持っていなければならないということになります。
つまり、社長様の身に起こるXデーの少なくとも5年前には、社長様以外の方を取締役に就任させておく必要があるのです。
ただ、将来を考えて取締役を就任させ、常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))の後継者(候補者)としていたにもかかわらず、予定外にXデーが早くなってしまいそうな場合はどうすれば良いのでしょうか。
要件を満たすまで何年も待っている時間がなさそうな場合はどうすれば良いのでしょうか。
常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))の要件を満たす役員がいなくなり、建設業許可の継続を諦めなければならいのでしょうか。
そんなことはありません。
例えば、こんな方法で常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))の後継者(候補者)を準備することができます。
ある意味でヘッドハンテイング的な対策となります。
つまり、他の建設業許可業者で取締役を5年以上されていた方を常勤の取締役として新たに迎え入れることで建設業許可の継続をはかると言うものです。
簡単に外部の人間を雇い入れられるかとお叱りを受けそうですが、建設業許可を失ってしまうと施工現場に入場することすらできなくなる厳しい現実もあります。
常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))の経験には、国家資格も研修制度もありません。
つまり、資格要件を満たすには、どうしても一定の時の経過を必要とします。
なので、社長様の建設業法上の後継者(候補者)、つまり、常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))の後継者(候補者)は計画的に準備しておく必要があるのです。
専任技術者(専技)の資格要件と後継者(候補者)
他方、専任技術者(専技)の場合には、大きく実務経験と国家資格の証明によって資格要件を満たすことができます。
特に、その工事業種の専任技術者(専技)に就任できるとされている国家資格を持つ常勤者を用意できれば、それ以上の証明を必要としません。
この常勤者は、役員つまり取締役である必要はありません。
従って、社長様がご健在の間に、常勤の従業員に必要とする工事業種の国家資格を取得させることはとても有効な手立てとなります。
もちろん、国家資格を取得するための手当て等の整備も必要となると思われます。
また、指定建設業(7工事業種)を除くと、一般建設業であれ、特定建設業であれ、技術者の学歴等により3年以上~10年以上の実務経験で専任技術者(専技)となることもできます。
従業員の採用や転職者の採用の際に、その方の学歴や前職が建設業許可の許可業者であったか等、細かく確認しておくことも重要となります。
転職者の前職が建設業許可の許可業者で、社会保険に加入している会社であれば、その転職者の実務経験証明の負担も軽減されます。
専任技術者(専技)の資格要件については、必要とする国家資格者を常勤の技術者で用意できれば経営業務の管理責任者(経管)のように、一定の時の経過を必要としません。
極端な話、新入社員の技術者でも良いのです。
ただ、社長様の身に起こるXデーが近づいたときに、望むような人材を確保できるかはとても不確定です。
日頃から、従業員の経歴や中途採用時の条件等に気を配っておくことも重要となります。
経管と専技の高齢化・事故・病気による退任対策(まとめ)
常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))と専任技術者(専技)の高齢化・事故・病気による退任対策についてご説明してまいりました。
常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))や専任技術者(専技)を兼ねておられる社長様のXデーが近づいてからの後継者(候補者)準備では、建設業許可を維持することはとても難しいとご理解いただけたと思います。
特に、常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))の準備については、資格要件を満たす方を外部から迎えていない限り、5年間以上の時の経過を必要とするケースが多くなってしまうので注意しなければなりません※。
早めの後継者(候補者)の準備を必要としています。
もちろん、専任技術者(専技)についても、資格要件を満たす後継者(候補者)を事前に準備しておかなければなりません。
弊事務所では、建設業許可について、人的・物的・財産的要件の確認から、確認資料・証明資料の収集、申請書類の作成、各行政庁への提出代行と手続き全般を一貫サポートしております。
常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))や専任技術者(専技)の資格要件や証明方法でお困りの建設業者様はお気軽にお問い合わせください。
※正確には「経営体制(常勤役員等と常勤役員を直接に補佐する者)」を備える方法もあります。
但し、中小建設業者様の場合、複数の人材を許可要件を満たした体制で準備することは現実的には大変難しいものになっています。