- 法定外労災に加入すれば、経営事項審査では必ず加点されるの
- 健康保険・厚生年金保険の加入事業者は、法定外労災も加点対象なの・・・
- 法定労災の適用除外事業者は、法定外労災では加点されないの・・・
経営事項審査(経審)の審査項目の中に、「その他の審査項目」という項目があります。
「その他の審査項目」では、社会性等の評価がなされています。
これらの社会性等の評価で、該当する項目があると加点評価になったり、反対に、例えば社会保険に未加入項目があると減点評価になったりします。
高い総合評定値(P点)を得たいとお考えの建設業者様は、経営事項審査(経審)の審査項目中、先ず初めに「その他の審査項目」についての対策を取られることが多いと思います。
ただ、この「その他の審査項目」には、加点評価になりそうで加点評価にならないこともあるのです。
本記事では、経営事項審査(経審)の評点アップの落とし穴として、見落としがちな加点評価にならない事例(法定外労災)についてご説明したいと思います。
労働福祉の状況
経営事項審査(経審)では、労働福祉の状況として①雇用保険加入の有無②健康保険加入の有無③厚生年金保険加入の有無④建設業退職金共済制度加入の有無⑤退職一時金制度若しくは企業年金制度導入の有無⑥法定外労働災害補償制度加入の有無が審査されています。
特に注意すべきは、「雇用保険」「健康保険」「厚生年金保険」についてです。
これらの3項目について、未加入であると各々40点の減点となります。
従って、仮に「雇用保険」「健康保険」「厚生年金保険」の3保険に未加入であった場合には、120点の大減点となってしまいます。
建設業者様によっては、この3項目の減点で経営事項審査(経審)を受ける意味がなくなってしまうことがあるくらいです。
「雇用保険」「健康保険」「厚生年金保険」の3項目の減点についてはとても重要な項目なのでご説明しています。
本記事の本題はこの3保険のことではありません。
法定外労働災害補償制度加入(法定外労災加入)の有無
経営事項審査(経審)では、労働福祉の状況として法定外労働災害補償制度加入(法定外労災加入)の有無について審査されます。
法定外労働災害補償制度(法定外労災)とは、政府の労働災害補償制度(法定労災)とは別に上乗せ給付等を行うことを目的としています。
そのため、政府の労働災害補償制度(法定労災)に加入していることを前提としています。
その上で、次の4要件を全て満たしている場合に加点評価の対象となります。
- 業務災害と通勤(出勤と退勤両方)災害を担保していること
- 死亡及び労働災害補償保険の傷害等級第1級から第7級を補償(業務起因性疾病は対象外)していること
- 直接の使用関係にある下請負人(数次の場合は下請負人全て)の直接使用関係にある職員全てを対象としていること(記名式は認められません。)
- 当該申請者が施工する全工事(共同企業体及び海外工事は除きます。)を補償(工事現場毎の契約は対象外)していること。
経営事項審査(経審)の審査基準日(決算日)において、法定外労働災害補償制度(法定外労災)に加入していれば、申請書の項番46に「1」を、加入していなければ「2」を記入することになります。
建設業者様の中には、「こんなことわかっている、これの何が問題になるの。」と思われる方もいらっしゃるかと思います。
少し、簡単な事例で考えてみましょう。
経営事項審査、評点アップの落とし穴(事例)
とび・土工工事業の建設業許可をお持ちのA社様、経営事項審査(経審)を受けるにあたり、少しでも総合評定値(P点)を高くしたいとお考えになり、法定外労働災害補償制度(法定以外労災)に加入されました。
もちろん、法定外労働災害補償制度の4要件についても全て満たしている保険に加入されています。
A社様は加点がもらえると思っていたところ、経営事項審査(経審)会場で、審査行政庁より「A社様は、加点対象にならない。」と言われてしまいます。
一体どういうことなのでしょうか。
ヒントは、法定外労働災害補償制度(法定外労災)が、政府の労働災害補償制度(法定労災)とは別に上乗せ給付等を行うことを目的としている点にあります。
つまり、A社様は、政府の労働災害補償制度(法定労災)に加入していなかったため、上乗せ給付として法定外労働災害補償制度(法定外労災)に加入していても、加点対象とならなかったのです。
「なんだ、そんなことか。A社が経営事項審査(経審)の申請前に、しっかりと要件を確認しておけば良かっただけだ。」とお思いの建設業者様もいらっしゃると思います。
でも、A社様の場合、実は少し違う事情があったのです。
この事情こそが、経営事項審査(経審)の評点アップ(法定外労災)の落とし穴となるのです。
経営事項審査、評点アップの落とし穴(事例の真相)
A社様には、社内には代表取締役と業務執行の役員(取締役)しかいらっしゃいませんでした。
そのため、A社様は政府の労働災害補償制度(法定労災)に加入できません。
政府の労働災害補償制度(法定労災)は、従業員のために事業主が加入する制度となっているからです。
この場合、A社様は、政府の労働災害補償制度(法定労災)については、未加入ではなく適用除外となります(違法ではありません)。
また、A社様は「健康保険」と「厚生年金保険」にはしっかりと加入されており、法的には何ら問題がない状態です。
そのため、A社様は、経営事項審査(経審)の評点アップを狙って法定外労働災害補償制度(法定外労災)に加入されたのです。
でも結果は、法定外労働災害補償制度(法定外労災)の加入による加点は認められませんでした。
もう、おわかりですね。
法定外労働災害補償制度(法定外労災)の加入による加点は、あくまでも上乗せ給付等を行うことに対してなされています。
従って、そもそも上乗せ給付等の前提となる政府の労働災害補償制度(法定労災)に加入していない場合には、加点されないのです。
確かに、A社様は政府の労働災害補償制度(法定労災)については適用除外であり、そもそも加入できません。
しかし、法定外労働災害補償制度(法定外労災)の加点評価という点については、政府の労働災害補償制度(法定労災)の未加入業者と適用除外業者は、結果として「加点なし」という同じ扱いになっています。
A社様は、当初の目論見がはずれて肩を落とされてしまいました。
では、この場合、どうすればA社様は法定外労働災害補償制度(法定外労災)の加入による加点を得ることができたのでしょうか。
特別労災制度(任意加入)の加入と法定外労災制度の加入
経営者や一人親方が任意加入できる保険として、特別労災保険制度(任意加入)があります。
では、A社様の代表取締役や業務執行の役員(取締役)が経営事項審査(経審)の審査基準日(決算日)に特別労災保険制度(任意加入)に加入されていた場合、どうなったのでしょうか。
実は、この特別労災保険制度(任意加入)に加入していれば、A社様は法定外労働災害補償制度(法定外労災)の加入による加点を認めてもらえたのです。
A社様のように会社に代表取締役や業務執行の役員(取締役)を除き、従業員が全くいない建設業者様も、特別労災保険制度(任意加入)の加入をご検討されてはいかがでしょうか。
そうすれば、法定外労働災害補償制度(法定外労災)の加入による加点を認めてもらえ、総合評定値(P点)を少しでも高くすることができます。
弊事務所では、決算変更届(事業年度終了届)や経営状況分析を含め、経営事項審査(経審)について建設業者様に代わり申請を代行しております。
経営事項審査(経審)でお困りの建設業者様は、弊事務所までご相談ください。