- 経営事項審査の評点アップって、どうすればよいの
- 経営状況の分析(Y)って、何を審査されているの・・・
- 経営状況分析(Y)を高めることって、できるの・・・
建設業者様は、国や地方公共団体等から公共工事の発注を直接請け負いたい場合、経営事項審査(経審)を受審しなければなりません。
経営事項審査(経審)では、建設業者の経営規模の認定(X)技術力の評価(Z)社会性の確認(W)経営状況の分析(Y)といった項目を審査されます。
そして、建設業者様は、総合評点値(P)を客観的な評価点として持っことになります。
経営事項審査の評点アップ、Y点を高めよう
先ずは、経営審査事項(経審)の審査項目について確認してみましょう。
<審査項目>
1 経営規模の認定(X)
(1) 完成工事高(X1)
(2) 自己資本額(X2)
(3) 利払前税引前償却前利益(X2)
2 技術力の評価(Z)
(1) 技術職員数
(2) 元請完成工事高
3 社会性の確認(W)
(1) 労働福祉の状況
(2) 建設業の営業継続の状況
(3) 防災活動の貢献の状況
(4) 法令遵守の状況
(5) 建設業の経理の状況
(6) 研究開発の状況
(7) 建設機械の保有状況
(8) 国際標準化機構が定めた規格による登録の状況
(9) 若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況
(10) 知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況
4 経営状況の分析(Y)
(1) 純支払利息比率
(2) 負債回転期間
(3) 売上高経常利益率
(4) 純資本売上総利益率
(5) 自己資本対固定資産比率
(6) 自己資本比率
(7) 営業キャッシュフロー(絶対値)
(8) 利益剰余金(絶対値)
1から3は経営規模等評価(X、Z、Y)と言われ、都道府県知事や国土交通省といった許可行政庁によって審査が行われます。
4の経営状況の分析(Y)については登録経営状況分析機関(現在10機関、申請者の任意選択)によって審査を行うことになっています。
総合評点値(P)は、許可行政庁により経営状況の分析(Y)の結果と経営規模等評価(X、Z、W)の結果の客観的評価に基づき総合的に評価して算出されます。
<計算式>
- P=0.25X1+0.15X2+0.2Y+0.25Z+0.15W
本記事では、経営状況分析(Y)のメカニズムを理解するとともに、Yを構成する8つの審査項目に対してどのような対策をすればYを高められるか、ひいてはPを高くすることができるかを考えていきます。
経営状況の分析(Y)の審査項目の内訳
<分析指標>
- 純支払利息比率(X1)
売上高に対する純粋な支払利息の割合を見る比率で、低いほどよい
- 負債回転期間(X2)
負債総額月商の何ヶ月分に相当するかを見る比率で、低いほどよい
- 純資本売上総利益率(X3)
総資本に対する売上総利益の割合、投下した総資本に対する売上総利益の状態を示す比率で、高いほどよい
- 売上高経常利益率(X4)
売上高に対する経常利益の割合、企業の経常的活動による収益力を示す比率で、高いほどよい
- 自己資本対固定資産比率(X5)
設備投資などの固定資産がどの程度自己資本で調達されているかを見る比率で、高いほどよい
- 自己資本比率(X6)
総資本に対し自己資本の占める割合、資本蓄積の度合を示す比率で、高いほどよい
- 営業キャッシュフロー(絶対値)(X7)
企業の営業活動により生じたキャッシュの増減を見る比率で、高いほどよい
- 利益剰余金(絶対値)(X8)
企業の営業活動により蓄積された利益のストックを見る比率で、高いほどよい
これら分析指標の中で、中小建設会社において特に点差のつきやすい、純支払利息比率(X1)、総資本売上総利益率(X3)、自己資本比率(X6)の3つの指標について詳しくご説明していきます。
また、どうすれば経営状況分析(Y)を高めることができるのか具体的な対策についてもご説明します。
純支払利息比率(X1)を好転させよう
純支払利息率(X1)のY全体への寄与率は、29.9%となっており極めて高いものとなっています。
<計算式>
- 『純支払利息比率=(支払利息-受取利息配当金)÷売上高×100』
この指標については、低いほど良いとなっています。
従って、分子を小さく分母を大きくする必要があります。
先ずは分母を小さくできないか検討していきます。
例えば、支払利息に手形割引率が入っている場合、支払利息を純粋な支払利息のみの金額にします。
また、雑収入に受取配当金が含まれている場合もあり、その場合は配当金を雑収入より受取利息配当金に移動します。
次に分母を大きくできないか検討してみます。
ここで言う売上高には建設工事以外の兼業分の売上高を含んでいます。
もし、営業外収益に雑収入があった場合、雑収入の中で兼業売上高に入れられるものはないか検討してください。
例えば、受取家賃や自動販売機の収入も兼業売上高に入れることができる可能性があります。
総資本売上総利益率(X3)を好転させよう
総資本売上総利益率(X3)のY全体への寄与率は、21.4%となっており、指標の中で2番目に高くなっています。
<計算式>
- 『総資本売上総利益率=売上総利益÷総資本(2期平均)×100』
この指標については、大きいほど良いとなっています。
従って、分子を大きく分母を小さくする必要があります。
ここでは分子を大きくできないか検討してみます。
ここで言う売上総利益も建設工事以外の兼業分の売上利益を含んでいます。
もし、営業外収益の雑収入があった場合、雑収入の中で兼業売上利益に入れられるものはないか検討してください。
例えば、受取家賃や自動販売機の利益も兼業売上利益に入れることができる可能性があります。
自己資本比率(X6)を好転させよう
自己資本比率(X6)のY全体への寄与率は、21.4%となっており、指標の中で3番目に高くなっています。
<計算式>
- 『自己資本比率=自己資本÷総資本×100』
この指標については、大きいほど良いとなっています。
従って、分子を大きく分母を小さくする必要があります。
ここでは、総資本を小さくする方法を検討してみます。
例えば、その他の固定資産としてゴルフ会員権や保険積立金はないでしょうか。
もし、余り使っていないゴルフ会員権や昔に加入した保険積立金があれば、処分できるものはないかか検討してください。
保険積立金については、加入時と状況が変わっていないか、現在も本当に必要な保険であるのか確認してください。
負債を減らすことで、自己資本率を高められます。
経営事項審査の評点アップ、Y点を高めよう(まとめ)
ここまで経営状況分析(Y)のメカニズムを理解するとともに、Yを構成する審査項目に対してどのような対策をすればYを高められるか、ひいてはPを高くすることができるかを考えてきました。
難しい用語もたくさん出てきましたが、ご理解いただけましたでしょうか。
経営状況の分析(Y)を高めるアクションについては、今回ご紹介したものが全てではありません。
また、決算の確定前に対策を講じる必要がある項目もあります。
経営事項審査における総合評点値(P)を高めるには、決算の確定前から経営状況分析(Y)の分析指標や計算式を意識して対策を考えていく必要があるのです。
弊事務所では、決算変更届や経営状況分析を含む、経営事項審査申請(経審)について建設業者様に代わって申請を代行しております。
経営事項審査(経審)でお困りの建設業者様は、お気軽にご相談ください。