建築士事務所登録制度の概要(その2)

  • 建築士事務所の登録後に必要なことはあるの
  • 建築士事務所の開設者にはどんな責任があるの・・・
  • 建築士事務所の開設者が準備しなければならない書面って何・・・

建築士事務所登録を受けたら、その後は何もしなくとも良いのでしょうか。

いいえ、建築士事務所の登録を受けた方は建築士法によって都道府県知事への報告等様々な義務を課されています。

建築士事務所登録制度の概要(その2)では、この建築士事務所の開設者(建築士事務所の登録を受けた方)の義務についてご説明したいと考えています。

建築士事務所の開設者の義務

建築士事務所の開設者の義務として、建築士法は次のような事項を定めています。

<開設者の義務>

①設計等の業務に関する報告書(建築士法第23条の6、同法施行規則第20条の3)

②一括委託の禁止(建築士法第24条の3)

③帳簿及び図書の保存(建築士法第24条の4、同法施行規則第21条)

④標識の掲示(建築士法第24条の5、同法施行規則第22条(第7号書式)

⑤書類の閲覧(建築士法第24条の6、同法施行規則第22条の2)

⑥設計・工事監理契約の際の重要事項説明(建築士法第24条の7、同法施行規則第22条の2の2)

⑦設計等の契約の原則(建築士法第22条の3の2)

⑧書面による契約締結の義務(建築士法第22条の3の3)

⑨書面の交付(建築士法第24条の8、同法施行規則第22条の3)

⑩管理建築士が述べる意見の尊重義務(建築士法第24条第5項)

⑪設計等の業務に係る損害賠償保険の契約締結等の努力義務(建築士法第24条の9)

⑫報告及び立入検査への協力(建築士法第26条の2、第41条第16号)

建築士事務所の開設者には、①~⑫の様々な義務が課されています。

次項以降で、建築士事務所の開設者に対する義務の詳細について項目ごとに確認していきます。

①設計等の業務に関する報告書

建築士事務所の開設者は、事業年度ごとに建築士法第23条の6と同法施行規則第20条の3の規定に定められている事項(第六号の二書式)について報告書の提出を義務付けられています。

<報告書の記載事項>

  • 事務所の業務の実績
  • 所属建築士名簿
  • 所属建築士の業務の実績
  • 管理建築士による意見の概要

②一括委託の禁止

建築士事務所の開設者は、新築工事で延べ面積300㎡を超える建築物について、委託者の承諾を得た場合でも、委託を受けた設計や工事監理の業務を、それぞれ一括して他の建築士事務所の開設者に委託することはできません。

③帳簿及び図書の保存

建築士事務所の開設者は、業務に関する帳簿を事業年度の末日の翌日から起算して15年間保存しておく必要があります。

更に、その建築士事務所に所属する建築士が、建築士事務所の業務として作成した建築士でなければ設計できない設計図書等についても、作成日から起算し15年間保存しておく必要があります。

<帳簿の記載事項>

  • 契約の年月日
  • 契約の相手方の氏名又は名称
  • 業務の種類及びその概要
  • 業務の終了の年月日
  • 報酬の額
  • 業務に従事した建築士及び建築設備士の氏名
  • 業務の一部を委託した場合にあっては、当該委託に係る業務の概要並びに受託者の氏名又は名称及び住所
  • 管理建築士が開設者に対し、必要な意見が述べられたときは当該意見の概要

<保存図書>

保存図書は、「建築士事務所に所属する建築士が建築士事務所の業務として作成した設計図書のうちイとロに掲げるもの」、「工事監理報告書で、建築士法第3条から第3条の3までの規定によって建築士でなければ作成できないもの(除、作成日から起算して15年を経過したもの)」となっています。

イ 配置図、各階平面図、二面以上の立面図及び二面以上の断面図

ロ 当該設計が建築基準法第6条第1項第2号又は第3号に係るものであるときは、①のほか、基礎伏図、各階床伏図、小屋伏図、構造詳細図及び構造計算書

④標識の掲示

建築士事務所の開設者は、建築士事務所の公衆の見やすい場所に、次のような標識を掲げる必要があります。

<標識の基準>

  • 標識の大きさ 縦25㎝以上、横40㎝以上
  • 標識の記載内容 建築士事務所の名称・登録番号・開設者名・管理建築士名・登録の有効期間等

この標識は、建築士事務所の開設者で作成してもかまいません。

もちろん、各都道府県の建築士事務所協会等で購入することもできます。

⑤書類の閲覧

建築士事務所の開設者はイとロの書類を第七号の二書式により、事業年度ごとに事業年度経過後三月以内に作成し、建築士事務所に三年間据え置かなければなりません。

また、その書類を、設計等を委託しようとする建築士(含、建築主になろうとする者)の求めに応じて、閲覧させなければなりません。

<据え置く書類>

イ 当該建築士事務所が行った業務の実績、所属建築士の氏名及び業務の実績、その他国土交通省令(建築士法施行規則第22条の2)で定める事項を記載した書類(第七号の二書式)

ロ 設計等の業務に関し生じた損害を賠償するために必要な金額を担保するための保険契約の締結等を講じている場合はその内容を記載した書類

<建築士法施行規則第22条の2で定める事項>

  • 建築士事務所の名称及び所在地
  • 当該建築士事務所の開設者の氏名
  • 当該建築士事務所の一級建築士、二級建築士又は木造建築士の別
  • 登録番号
  • 登録の有効期間
  • 所属建築士の氏名・その他の者の一級建築士、二級建築士又は木造建築士の別・登録番号・定期講習のうち直近のものを受けた日・構造、設備設計一級建築士及び管理建築士である場合はその旨

⑥設計・工事監理契約の際の重要事項説明

建築士事務所の開設者は、設計または工事監理の契約締結を行うときは、建築士法第24条の7および同法施行規則22条の2の2の規定によって予め建築主に対して重要事項の説明をしなければなりません。

その際は、管理建築士または所属建築士によって、設計委託契約または工事監理委託契約の内容およびその履行に関する事項を記載した書面を交付し、重要事項の説明をさせる必要があります。

<重要事項>

  • 設計図書の種類
  • 工事と設計図書の照合の方法及び工事監理の実施の状況に関する報告の方法
  • 設計又は工事監理に従事することとなる建築士の氏名及び一級・二級・木造建築士の別、構造・設備設計一級建築士である場合はその旨
  • 報酬の額及び支払時期
  • 契約の解除に関する事項
  • その他建築士法施行規則で定める事項

⑦設計等の契約の原則

設計または工事監理の委託を受けることを内容とする契約書の当事者は、対等な立場での公正な契約締結と誠実な履行を求められます。

⑧書面による契約締結の義務

延べ面積が300㎡を超える建築物の設計または工事監理については、書面による契約締結を義務付けられています。

契約締結に際しては、必要事項を記載した書面に署名または記名押印して相互に交付することが必要となります。

また、必要事項を変更する場合も同様に書面の相互交付を必要とします。

<設計受託契約/工事監理受託契約の記載事項>

  • 設計受託契約又は工事監理受託契約の対象となる建築物の概要
  • 設計又は工事監理の実施の期間
  • 設計受託契約にあっては、作成する説明図書の種類
  • 工事監理受託契約にあっては、工事と設計図書との照合の方法及び工事監理の実施の状況に関する報告の方法
  • 建築士事務所の名称及び所在地並びに当該建築士事務所の一級建築士事務所・二級建築士事務所・木造建築士事務所の別
  • 建築士事務所の開設者の氏名(当該建築士事務所の開設者は法人である場合にあっては当該開設者の名称及びその代表者の氏名)
  • 当該設計又は工事監理に従事することとなる建築士の氏名及びその者の一級建築士、二級建築士又は木造建築士の別並びにその者が構造設計一級建築士又は設備設計一級建築士である場合にあっては、その旨
  • 業務に従事することとなる建築士の登録番号
  • 業務の従事することとなる建築設備士がいる場合にあっては、その氏名
  • 設計又は工事監理の一部を委託する場合にあっては、当該委託に係る設計又は工事監理の概要並びに受託者の氏名又は名称及び当該受託者に係る建築士事務所の名称及び所在地
  • その他設計又は工事監理の種類、内容及び方法に係る事項
  • 報酬の額及び支払いの時期
  • 契約の解除に関する事項

この書面による契約締結の義務については、建築士事務所だけではなく、委託者である建築主等も対象となっています。

建築士事務所間における契約においても適用されます。

また、工事請負契約において、設計、工事監理の内容を含む一括契約も対象となります。

⑨書面の交付

建築士事務所の開設者は、設計受託契約または工事監理受託契約を締結したときは、建築士法第24条の8および同法施行規則第22条の3で定める事項を記載した書面を委託者に交付する必要があります。

<書面の記載事項>

  • 設計又は工事監理の種類及びその内容
  • 設計又は工事監理の実施の期間及び方法
  • 報酬の額及び支払いの時期
  • 契約の解除に関する事項
  • 建築士事務所の名称及び所在地
  • 契約の年月日
  • 契約の相手方の氏名又は名称
  • 設計又は工事監理に従事する建築士及び業務に従事する建築設備士の氏名
  • 設計又は工事監理の一部を委託する場合にあっては、当該委託に係る設計又は工事監理の概要並びに受託者の氏名又は名称及び住所など

※本書面を作成した際には、書面に記名押印または署名をしなければなりません。

※受託契約について、⑧契約書面を相互に交付した場合、建築士法第24条の8による⑨書面の交付は省略できます。

⑩管理建築士が述べる意見の尊重義務

建築士事務所の開設者は、建築士事務所の業務にかかる技術的事項について述べられた管理建築士の意見を尊重する必要があります。

⑪設計等の業務に係る損害賠償保険の契約締結等の努力義務

建築士事務所の開設者は、設計等の業務に生じた損害を賠償するために、損害賠償保険に加入する等の措置を講じるよう努めなければなりません。

⑫報告及び立入検査への協力

この規定は、都道府県知事等が建築士事務所の状況をたえず的確に把握することで、適切な建築行政を行うことを目的としています。

建築士事務所の開設者は、正当な理由なく報告や検査を拒む等の行為をした場合、罰せられることもあります。

建築士事務所登録制度の概要(その2)まとめ

ここまで、建築士事務所登録の概要(その2)として、建築士事務所の開設者(建築士事務所の登録を受けた方)の義務について項目ごとに詳細をご説明してきました。

建築士法は、「設計等の業務の適正化」や「建築物の質を向上」を主な目的としています。

建築士事務所の開設者は、これら目的の実現のために大きな役割と責任を課されているのです。

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