建設工事の請負契約

  • 工事は受注しているが、請負契約書なんて結んでいないよ
  • 注文書は、元請業者が作成したものをFAXでもらっている・・・
  • 注文書はあるが、注文請書は作っていないよ・・・
  • 請負契約書、注文書、注文請書には、何を記載しておく必要があるの・・・

建設業許可申請において、常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管)等)や専任技術者(専技)の経営経験や技術者として要件を確認するために、請負契約書、注文書、注文請書等を使用することがございます。

特に、許可業者にお勤めになったご経験のない方が建設業許可を申請する場合には、数年分の請負契約書、注文書、注文請書等は必須の確認資料となっています。

その意味で、建設工事の請負契約書、注文書、注文請書等は許可取得の死命を制するひとつとも言えます。

建設工事の請負契約

今回は、建設業の請負契約について、建設業許可そのものから離れ、その役割と意義を踏まえた上で、その内容等につき、概略をご説明したいと考えております。

建設業法第19条は、建設工事の当事者に対し、契約締結に際して、契約の内容となる一定の重要な事項を書面に記載し、相互に交付すべきと規定しています。

民法第632条では、請負契約は両当事者の合意によって成立する契約とされ、契約の成立には様式を問われることはありません(諾成契約)。

従って、一般的には、口約束であっても契約の効力は発生するのです。

建設工事の請負契約書(書面による契約締結)

では、なぜ、建設工事の請負契約には、書面という様式が求められているのでしょうか。

と言うのは、もし、建設工事について口約束で契約が成立するならば、契約の内容は不明確となり、将来、紛争の原因になってしまう可能性が出てくるからです。

従って、工事の内容や契約の内容となるべき重要事項についてはできるだけ具体的に記載しておく必要がございます。

尚、相手方の承諾があれば、書面交付に代えて電子的手段によって契約を行うこともできます(建設業法第19条第3項)。

請負契約書に記載すべき重要事項

では、建設工事の請負契約書には、どのような内容を具体的に記載すれば良いのでしょうか。

請負契約書に記載すべき重要事項は16項目あります。

これら16項目については、当事者の対等な立場における合意に基づいて公正に定める必要があります。

従って、単にこれらの事項を書面に記載すれば良いというわけではありません。

<請負契約書に記載を要する重要事項>

  1.  工事内容
  2.  請負代金の額
  3.  工事着手の時期及び工事完成の時期
  4.  工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
  5.  請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払いの定めをするときは、その時期及び方法
  6.  当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
  7.  天災その他の不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
  8.  価格等の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
  9.  工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
  10.  注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
  11.  注文主が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
  12.  工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
  13.  工事目的物の瑕疵担保責任又は瑕疵担保責任の履行に関して保証保険契約等の措置に関する定めをするときは、その内容
  14.  各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
  15.  契約に関する紛争の解決方法
  16.  その他国土交通省令で定める事項

※契約締結には、契約の内容となる重要事項16項目を明示した適正な契約書を作成し、工事着手までに署名または記名押印して相互に交付する必要があります(建設業法第19条第1項)。

※更に、追加工事や契約内容に変更が生じた場合も、適正な契約書を作成し、追加工事等の工事着手までに署名又は記名押印して相互に交付する必要があります(同法第19条第2項)。

※加えて、注文者は、請負契約締結後、自己の取引上の地位を不当に利用し、注文した建設工事に使用する資材もしくは機械器具又はこれらの購入先を指定し、これらを請負人に購入させて、その利益を害してはいけません(建設業法第19条の4)

注文書と注文請書による契約締結

建設業の請負契約を注文書と注文請書にて締結することも可能となっています。

その場合には、注文書と注文請書の他に次の要件を満たした基本契約書または基本契約約款を必要としています。

<当事者間で基本契約を締結、個別取引は注文書と注文請書を交換の場合>

  • 基本契約書には、個別の注文書と注文請書に記載される事項を除いて、重要事項16項目(建設業法第19条第1項各号)を記載し、当事者間の署名または記名押印をして相互に交付すること
  • 注文書と注文請書には、請負代金の額、工事着手の時期及び工事完成の時期(建設業法第19条第1項第1号から第3号)その他必要な事項を記載すること
  • 注文書と注文請書には、注文書と注文請書に記載されている事項以外の事項については、基本契約書の定めによるべきことを明記すること
  • 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名又は記名押印すること

<注文書と注文請書を交換の場合>

  • 注文書と注文請書のそれぞれに、同内容の基本契約約款を添付または印刷すること
  • 基本契約約款には、注文書と注文請書の個別的記載事項を除いて、重要事項16項目(建設業法第19条第1項各号)に掲げる事項を記載すること
  • 注文書と注文請書と基本契約約款が複数枚に及ぶ場合には、割印を押印すること
  • 注文書と注文請書の個別的記載欄には、請負代金の額、工事着手の時期及び工事完成の時期(建設業法第19条第1項第1号から第3号)その他必要な事項を記載
  • 注文書と注文請書の個別的記載欄には、それぞれの個別的記載欄に記載されている事項以外の事項については、基本契約約款の定めによるべきことを明記すること
  • 注文書には注文主が、請書には請負者がそれぞれ署名又は記名押印すること

建設リサイクル法の対象工事について

建設リサイクル法の対象工事の場合、「契約書に記載しておかなければならない重要事項14項目」に加え、次の事項の記載を必要とします。

  1.  分別解体等の方法
  2.  解体工事に要する費用
  3.  再資源化等をするための施設の名称及び所在地
  4.  再資源化に要する費用

建設工事の請負契約(まとめ)

ここまで、建設工事の請負契約について、その役割と意義を踏まえて、請負契約の内容等につき、概略をご説明してきました。

建設工事の受注が決まると、注文者との間で、請負契約を結ぶことになります。

建設業法第18条は、当事者が「対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結し」「信義に従って誠実にこれを履行しなければならない」と規定しています。

請負契約の不公平さ、片務性を失くし、対等で合理的な契約にするための規定と言えます。

この基本原理を実現するために、建設業法第19条は、両当事者に対して請負契約書に記載する重要事項16項目等の規定しているのです。

<ご参考>

※これらの趣旨を踏まえ、建設工事の請負契約の締結にあたって利用される契約約款として、国土交通省中央建設業審議会により作成されたものとして「公共工事標準請負契約約款」、「民間工事標準請負約款(甲)・(乙)」、「建設工事標準下請契約約款」があります。

※この他にも、民間工事に用いるために作成された「民間(旧四会)連合協定請負契約約款」があります。

貴社への出張相談は、初回無料にて承っております。お電話とメール、ご都合のよい方法でご連絡ください。(ご来所での相談をご希望の方も、予めお電話・メールでご予約ください)

電話でご予約(または電話相談をご希望の方)
メールでご予約(またはメール相談をご希望の方)

メールで出張相談をご予約の際は、場所や希望日時(第2希望まで)の情報を添えてお送りください。

メール相談をご希望の方は、下記フォームよりご質問内容を送信ください。24時間承っておりますが、返信にお時間を頂戴する場合がございます。お急ぎの方は電話相談をご活用ください。

    お名前 (必須)

    メールアドレス (必須)

    電話番号(必須)

    ご希望の連絡先(必須)

    お電話にご連絡メールにご返信どちらでも可

    メッセージ本文

    スマートフォンで見る

    スマホからも同じ情報を閲覧できます。

    ページトップへ戻る