東京都の建設業許可をお持ちの建設業者様は、事業年度終了後4か月以内に東京都に決算変更届(変更届出書)を提出しなければなりません。
決算変更届(変更届出書)は、建設業許可をお持ちの建設業者様の1年間の事業内容を建設業法の求める様式で許可行政庁に報告するものです。
東京都の場合は、決算変更届(変更届出書)の内容は次の通りとなっています。
- 変更届出書
- 工事経歴書
- 直前3年の各事業年度における工事施工金額
- 建設業財務諸表
- 事業報告書(株式会社のみ)
- 使用人数(変更のある場合)
- 定款(変更のある場合)
- 健康保険の加入状況(人数の変更ある場合)
- 別綴じ用紙
- 納税証明書
この東京都の決算変更届(変更届出書)について、弊事務所でも様々なご相談をお受けしております。
その際、建設業者で作成された過去の決算変更届(変更届出書)を確認させていただく機会も多くあります。
工事経歴書を見てわかる!許可区分や配置技術者に係る建設業法違反(東京都の場合)
すると、建設業者様で作成された過去の決算変更届(変更届出書)の中に建設業法違反の可能性のある記載を発見できます。
特に、決算変更届(変更届出書)の工事経歴書の記載により建設業法違反の印象を受けるケースが数多くあります。
そんなときは、弊事務所より建設業者様に対して、問題のある工事経歴書の記載内容について詳細をお伺いしています。
合わせて、弊事務所より建設業者様にその問題に関連する建設業法のルールをご説明させていただいております。
東京都の建設業者様の中には、自社が建設業法上の違反を行っていたり、そもそも遵守すべき建設業法のルールをご存じなかったりする方もいらっしゃるようです。
本記事では、弊事務所にて建設業者様で作成された過去の工事経歴書の記載内容を確認した際の、典型的な建設業法違反の事例についてご説明させていただきます。
ケース1 元請業者で一般建設業許可業者の場合
- A建設工業㈱
- 東京都で一般建設業許可・内装仕上工事業
- 従業員は役員を含めて5名
- 工事経歴書に工事請負金額5億円の実績記載あり
建設業許可の区分として、一般建設業許可と特定建設業許可の二つの区分に分けられます。
この区分は、下請契約金額の制限の有無に関する区分となっています。
ここで、特定建設業許可について確認します。
建設業者様が元請として、消費税を含み総額4,500万円(建築一式工事は7,000万円)以上の建設工事を下請に出す場合、特定建設業許可を必要としています。
そして、特定建設業許可の場合、一般建設業許可の許可要件を全て満たした上で、財務的基礎、専任技術者(専技)、配置技術者の資格については更に厳しい要件を課されています。
ケース1では、A建設工業㈱様は、元請業者として5億円の内装仕上工事を受注されています。
工事請負金額については建設業法上の直接的な規制はありません。
ただ、総勢5名のA建設工業㈱様のみで5億円の工事施工を施工することは極めて難しいと思われます。
おそらくはA建設工業㈱様は、消費税を含み総額4,500万円以上の下請工事契約の締結を行うことで工事を施工されていることと思われます。
もし、そうであるならばA建設工業㈱様は建設業法違反を犯していることになってしまいます。
と言うのも、本内装仕上工事はA建設工業㈱様にとって、特定建設業許可をお持ちでなければそもそも受注できない規模の建設工事となるからです。
本工事を受注するには、ほぼ自社従業員のみで工事施工するか、特定建設業許可を取得するか等の対策を必要とします。
但し、特定建設業許可の場合、建設現場に配置しなければならない配置技術者も主任技術者ではなく監理技術者となってしまいます。
ケース2 専任技術者が配置技術者になっている場合
- ㈲B工務店
- 東京都で一般建設業許可・大工工事業
- 従業員は役員を含めて2名
- 工事経歴書に専任技術者を配置技術者とする実績記載あり
専任技術者(専技)の設置は建設業許可の重要な許可要件のひとつと言えます。
東京都で建設業許可を取得したり、維持したりする場合も例外ではありません。
ここで、専任技術者(専技)の意味を再度確認しておきます。
建設業許可を取得するためには、他の許可要件を全て充たした上で、専任技術者(専技)を営業所ごとに設置しなければなりません。。
この専任技術者(専技)は、建設業許可を取得したい営業所に常勤して専らその職務に従事することを求められています。
簡単に言えば、専任技術者(専技)は営業所専任の技術者となります。
つまり、専任技術者(専技)は、建設現場で施工管理等を行う技術者である配置技術者になることは原則としてできないのです。
では、東京都の建設業許可をお持ちの建設業者様はどのような技術者を建設現場の配置技術者にすればよいのでしょうか。
その建設業者様に所属されている技術者ならば誰でもよいのでしょうか。
いいえ、違います。
建設現場に配置する配置技術者は、専任技術者(専技)と同等の資格や経験をお持ちの技術者しかなることができません。
つまり、東京都の建設業許可をお持ちの建設業者様は、原則として専任技術者(専技)になることのできる資格や経験を持った技術者を少なくとも2名以上抱えていないといけないことになります。
ケース2では、㈲B工務店様は、専任技術者(専技)を建設現場の配置技術者にしておられます。
専任技術者(専技)は営業所専任の技術者です。
㈲B工務店様は、建設現場に適正な配置技術者を配置していない疑いを持たれることになります。
もし、そうであるならば㈲B工務店様は建設業法違反を犯していることになってしまいます。
特に、㈲B工務店様の所在地から建設現場が遠方の場合、建設業法違反の可能性は極めて高くなります。
㈲B工務店様は、その大工工事を受注するには、専任技術者(専技)と同等の資格や実務経験を持っている技術者を更に準備しなければならないのです。
㈲B工務店様は、新たな人材採用や人材確保を早急に進める必要があります。
専任技術者(専技)の営業所専任には、例外もあるため、建設業者様の中には専任技術者(専技)を現場の配置技術者にして良いと誤解されているケースが多々あります。
専任技術者(専技)は、あくまでも営業所専任の技術者であることを忘れないようにしてください。
ケース3 配置技術者が工期の重なる配置技術者を兼ねている場合
- C鉄工㈱
- 東京都で一般建設業許可・鋼構造物工事業
- 工事経歴書に請負金額7,000万円(消費税含む)以上の実績記載あり
- その工事と工期の重複した他の工事の配置技術者が同一の技術者
専任技術者(専技)とは異なる技術者を配置技術者として現場に配置する場合でも、注意すべき事項があります。
請負金額と配置技術者の現場配置を求められる工期について注意してください。
と言うのも、消費税を含み請負金額4,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上の建設工事については、その現場の配置技術者はその建設現場にのみ専任しなければならないからです。
これを配置技術者の現場専任義務と言っています。
専任義務のある現場とも言います。
従って、消費税を含み請負金額4,000万円以上の建設工事の配置技術者については、その工事の工期中は他の現場の配置技術者に就くことはできません。
ケース3では、C鉄工㈱様は、消費税を含み7,000万円の建設工事を受注されています。
この建設工事の配置技術者は、当然、その工期中はその現場に専任となります。
工事経歴書を見ると、C鉄工㈱様は、その配置技術者を工期の重なる他の現場の配置技術者とされております。
この場合も、C鉄工㈱様は、建設現場に適正な配置技術者を配置していないことになります。
これについても、建設業法違反となってしまいます。
C鉄工㈱様も、新たな人材採用や人材確保を早急に進める必要があります。
建設業者様の工事経歴書を見ると、4,000万円以上(建築一式工事の場合は8,000万以上)の建設工事の配置技術者が工期の重なっている他の建設工事の配置技術者とされているケースがあります。
これらについては原則として、建設業法違反となります。
工事経歴書を見てわかる!許可区分や配置技術者に係る建設業法違反(東京都の場合)(まとめ)
ここまで、弊事務所にて建設業者様で作成された過去の工事経歴書の記載内容を確認した際の、典型的な建設業法違反の事例について詳しくご説明してきました。
<注意すべき事例>
- ケース1 元請業者で一般建設業許可業者の場合
- ケース2 専任技術者が配置技術者になっている場合
- ケース3 配置技術者が工期の重なる配置技術者を兼ねている場合
これらの典型的な建設業法違反について、建設業者様にお話しすると、驚かれることがございます。
というのも、東京都の建設業許可をお持ちの建設業様の中には、これまで決算変更届の提出において、特に補正等を求められておらず、建設業法違反をお気づきになられていない方がいらしゃるからです。
建設業者様にとっては、建設業許可を取得することに主眼がいってしまい、その後の建設業許可業者としての義務の理解については、なかなか手が回らないのが実状のようです。
弊事務所では、東京都の建設業許可をお持ちの建設業者様に対し、決算変更届(変更届出書)の作成・提出の際に、建設業許可業者としての義務についてご説明しております。
弊事務所では、建設業者様に代わって東京都の建設業許可の各種申請や各種変更届について、申請書や変更届の作成から提出まで申請代行を行っております。
東京都の建設業許可の各種申請や各種変更届でお悩みの建設業者様は、弊事務所までお気軽にご相談ください。