- 廃業届って、必ず提出しないといけないの
- 一部廃業と全部廃業では、届出書類が違うって本当なの・・・
- 廃業届を提出する前に、届出書を提出しないといけないの・・・
建設業許可を取得するためには、多くの時間や手間を必要とします。
と言うのも、建設業許可申請は、様々な確認資料や証明資料を準備した上で、許可行政庁に要件を満たしていることを証明しなければならないからです。
このような苦労の末、建設業者様は建設業許可を取得することができます。
ただ、残念なことに、建設業許可を取得しても、そのまま自動的に取得された許可が継続されるわけではありません。
建設業許可の廃業届
建設業者様は、許可要件や許可基準を日々維持しながら、適宜、必要となる申請や届出を行うことで建設業許可を継続・更新できることになります。
しかし、事業環境や事業戦略の変化、後継者問題等のさまざまな理由によって、建設業の廃業を検討されることがあります。
本記事では、建設業の廃業の際に必要となる手続について、建設業許可の廃業届と届出書を中心に注意事項を含めてご説明したいと思います。
尚、ここで言う建設業の廃業とは、あくまでも建設業許可の廃業を意味し、建設業そのもの廃業という意味ではありません。
廃業届の重要性
ところで、一部の建設業者様の中には、建設業許可を必要としなくなると、そのまま建設業許可を放置してしまう方がいらっしゃいます。
その結果、建設業許可の有効期限を迎えても、廃業の届出がなされていない事態となってしまいます。
建設業許可の廃業をお考えの建設業者様にとって、どのみち建設業許可を必要としない状況なので、それも一つの考え方と思われるかもしれません。
但し、その場合、許可行政庁には、建設業許可の廃業ではなく、建設業許可の抹消という記録が残ってしまいます。
この建設業許可の抹消は、後に思いがけない問題が発生する可能性もあるのです。
例えば、その建設業者様が取得していた建設業許可の期間や実績が大幅に認められないことがあります。
後日、改めて建設業許可を取得しようとした際に、許可取得の大きな制約になってしまうことも考えられるのです。
従って、ここは、しっかりと適切な手続、つまり、面倒でも建設業の廃業届の提出をしておく必要があります。
建設業許可の廃業届をしっかりと許可行政庁に提出しておけば、廃業の年月日までの許可業者としての実績を認めてもらうことができます。
尚、建設業許可の廃業届を提出すると許可行政庁で取消処分がなされます。
建設業許可の廃業届による取消処分は、あくまでも手続上の取消処分なので、許可の欠格要件には該当しません。
従って、継続して軽微な工事を施工することも可能で、改めて建設業許可申請を行うことも可能となっています。
どうですか、建設業許可の廃業届の大切さをご理解いただけましたでしょうか。
廃業届の届出事項
建設業許可の廃業届について、少し整理しておきます。
建設業法第12条は、許可業者様に対して、以下の事項に該当するときは、許可行政庁に廃業届を提出するように定めています。
ちなみに廃業届の提出期限は30日以内とされています。
<廃業の届出事項>
- 許可を受けた個人事業主が死亡したとき(相続人)
- 法人が合併により消滅したとき(役員であった者)
- 会社が破産手続開始の決定により解散したとき(破産管財人)
- 法人が合併又は破産手続開始の決定以外の事由により解散したとき(清算人)
- 許可を受けた建設業を廃止したとき(法人代表者(申請人)・法人代表者(申請人)以外の役員・個人事業主本人)
※( )内は提出すべき方を記載しています。
一部廃業の廃業届と届出書
注意すべきは、発生した事態によっては、廃業届だけではなく届出書も提出しなければならないこともあるのです。
例えば、一部廃業を行った場合、廃業届とともに、専任技術者(専技)について、次のような届出書を提出しなければなりません.
◎担当していた業種は廃業、他の担当業種がある場合
担当業種の変更となります。
従って、専任技術者証明書(新規・変更)(様式第8号)を提出しなければなりません。
◎担当していた業種を廃業、他の担当業種もない場合
その技術者は、専任技術者(専技)ではなくなるので、「届出書」(様式第22号の3)を提出しなければなりません。
※一部廃業に伴う留意事項
一部廃業の届出時には、一部廃業後の各営業所における許可業種の状況を把握するため、様式第22号の2(第1面・第2面)による変更届を同時に提出します。
また、東京都の場合は、営業所が主たる営業所のみのケースでは、変更届出書(第一面)への業種廃止に係る記載は必要ありません(専任技術者(専技)に係る記載は必要)。
廃業届と届出書
ここで、廃業届と密接に関係する届出書についても整理します。
届出書は、次の場合に提出しなければなりません。
- 「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力」の基準を満たさなくなった場合(常勤役員等(経営業務の管理責任者等)がいなくなったとき等)
- 常勤役員等(経営業務の管理責任者等)を削除した場合(常勤役員等(経営業務の管理責任者等)が複数いる会社で、一部の業種を廃業したことにより、削除したとき等)
- 専任技術者の基準を満たさなくなった場合(専任技術者がいなくなったとき等)
- 専任技術者を削除した場合(業種の廃止に伴って専任技術者を削除したとき、営業所の廃止に伴って専任技術者を削除したとき)
- 欠格要件に該当するにいたった場合(建設業法第8条1号または第7号から第11号までに規定する欠格要件に該当したとき等)
常勤役員等(経営業務の管理責任者等)や専任技術者(専技)を欠いてしまうケースでは、代わる方がいらっしゃる場合は、2週間以内に「変更届」を提出しなければなりません。
また、代わりの方がいらっしゃらない場合には、「届出書」を提出の上、「廃業届」を提出することになります。
※尚、常勤役員等(経営業務の管理責任者等)や専任技術者(専技)については、変更後の方と変更前の方との間で、在職が継続していなければなりません。
届出書の重要性
ここでも許可要件を満たせないのであれば、届出書を提出せずに、廃業届だけを提出すれば良いとお考えの建設業者様がいらっしゃいます。
これは、良くありません。
廃業届による廃業によって届出書による許可取消処分を避けようとした場合、虚偽申請となってしまいます。
虚偽申請は、6ヶ月以内の懲役または100万円以下の罰金とされます。
この処分を受けると、以後5年間は建設業許可の申請ができなくなります。
建設業許可の廃業届のまとめ
ここまで建設業の廃業の際に必要となる手続について、建設業許可の廃業届や届出書を中心に注意事項を含めてご説明してきました。
廃業届と届出書については、建設業者様の廃業に至る事由によって、必要となる書面や記載方法が異なっています。
特に、一部廃業における営業所の廃止、専任技術者の廃止等では、必要となる書面や記載方法はわかりにくくなっています。
建設業の廃業届を提出される際には、将来の事業承継等も考慮に入れた上で、適正かつ慎重な届出を行うようご注意ください。
弊事務所では、建設業許可申請に係るご相談を積極的に承っております。
建設業許可申請でお悩みの建設業者様は、お気軽にお問い合わせください。
※東京都の廃業届の注意事項
建設業法施行規則の一部が改正され、令和3年1月1日より建設業法施行規則の別記様式の押印は廃止されています。
そのため、廃業届(建設業法施行規則別記様式22号の4)についても押印は不要となっています。
但し、東京都の場合、申請者の意思による提出であることを法人の印鑑証明書等の提示により確認しています。
具体的には、法人の場合は印鑑証明書、個人事業主の場合は本人の運転免許証等、本人を確認できる書類の提示を必要とします。
郵送で廃業届を東京都に提出する場合は、これらの写を同封することになります。