建設業許可を取得するための要件には実質的には何も問題がないのに、再度審査窓口に資料を整えて申請し直さなければならないことがあります。
新規申請のために大量の資料を持参したり、その他の申請や変更届で何時間も順番を待ったりした挙句、ちょっとしたうっかりで、「もう一度来てください(再来)。」と言われたら、とてもショックです。
建設業者様の中には、建設業許可申請のために特別に仕事を休まれていたり、現場を抜けてこられたりして、何とか申請のための時間を割かれている方も多くいらっしゃいます。
それなのに、「再来(さいらい)」とは、本当に滅入ってしまいますよね。
ここでは、そんなことにならないように、建設業者様に特に気を付けていただきたい「うっかり」についてご説明させていただきます。
代表者印のうっかり
※「押印を求める手続きの見直し等のための国土交通省関係法令の一部を改正する省令(令和2年国土交通省令第98号)」により建設業許可申請・変更届における法定様式の押印は廃止されています。
※従って、法定様式については本記事に記載のような「代表者印のうっかり」は発生しなくなります。
※但し、行政庁の定めている独自様式においては押印を必要とするものも残っております。
建設業許可申請においては、代表者の印や個人事業主様の印を押す書面が何種類もあります。
例えば、建設業許可申請(様式第一号)、誓約書(様式第六号)、経営業務の管理責任者証明書(様式第七号)、専任技術者証明書(様式第八号)、健康保険等の加入状況(様式第二十号の三)等を挙げることができます。
これらの書面においては、法人の場合は、法務局に登録している代表者印を押印しなければなりません。
個人事業の場合は、個人事業主の実印を押印する必要があります。
ここで注意すべきは、法人の場合です。
法人の場合、法務局に登録してある代表者印(実印)、見積書・請求書印、銀行印とお持ちになっており、印影もよく似たものがあるということです。
「うっかり」と法務局に登録してある代表者印(実印)以外の印を押印しないように気を付けてください。
また、法人の場合、稀に代表者が交代された際に、法務局に登録してある代表者印(実印)を変更されることがございます。
その場合、既に建設業許可を取得されている建設業者様は、直近の申請や届出の際に、印鑑証明書を提出しなければなりません。
さもなければ、押印が異なるとされて、申請書や届出が受理されません。
納税証明書のうっかり
建設業許可の新規申請や決算変更届(事業年度終了報告書)の際には、法人も個人も添付書類として納税証明書を提出しなければなりません。
この納税証明書は、法人と個人、都道府県知事許可(知事許可)と国土交通大臣許可(大臣許可)とで、必要となる納税証明書は異なっています。
法人で、知事許可であれば法人事業税について、大臣許可であれば法人税について、納税証明書を必要とします。
法人事業税については都道県税事務所で発行されます。
法人税については税務署で納税証明書を発行してもらいます。
個人で、知事許可であれば個人事業税(申告所得税)について、大臣許可であれば申告所得税について、納税証明書を必要とします。
個人事業税については都道府県税事務所で発行されます。
申告所得税については税務署で納税証明書を発行してもらいます。
ここでも注意を必要とします。
法人の場合、必要とされる納税証明書が、法人事業税(知事許可)と法人税(大臣許可)といった似たような名前となっています。
知事許可を申請される建設業者様に必要な証明書は、法人事業税の納税証明書となります。
「うっかり」と法人税の納税証明書を取得しないように気を付けてください。
また、個人で知事許可を申請される場合、個人事業税の納税期限との関係もあり、行政庁によっては申告所得税の納税証明書の提出を求めるケースもあります。
個人の場合、建設業許可の申請や届出の時期によって必要となる納税証明書の種類が異なるケースも出てきます。
個人で知事許可の建設業許可の申請や届出を行う際は、行政庁に事前に必要な納税証明書の種類を確認しておく必要があります。
「うっかり」と個人=個人事業税としないように気を付けてください。
法人番号のうっかり
平成28年11月1日施行の建設業法改正によって、建設業許可申請においても「法人番号」の記載をしなければならなくなりました。
例えば、建設業許可申請書(様式第一号)、変更届出書(様式第二十二号の二)、変更届出書(別紙8)等を挙げることができます。
これらの書面においては、法人番号の記載に間違いがないか、裏付け資料を必要とするケースもあります。
法人番号の裏付け資料は、法人番号指定通知書の写や国税庁法人番号公表サイトで検索した画面のコピーとなっています。
また、行政庁によって、裏付け資料の提出を求められるところと、提示のみで良いところがあります。
提示としている行政庁の中には、法人番号指定通知書の写や国税庁法人番号公表サイトで検索したコピーを忘れた場合、その場でスマートホンの検索画面を提示することで確認してくれる優しい行政庁もあります。
当然ながら、裏付け資料の提出を必須としている行政庁では、スマートホンの検索画面を提示するだけでは認められません。
「うっかり」と法人番号の裏付け資料を忘れないように気を付けてください。
電算入力用紙のうっかり(東京都編)
東京都の場合、建設業許可申請や変更届を提出する際に、電算入力用紙も提出しなければなりません。
例えば、主なものとして建設業許可申請書(様式第一号)、健康保険等の加入状況(様式第七号の三)、常勤役員等証明書(経営管理責任者用)(様式第七号)、専任技術者証明書(様式第八号)、変更届出書(第二十二号の二 第一面・第ニ面)、変更届出書(別紙8)等を挙げることができます。
電算入力用紙は、建設業許可の申請や変更届において既に作成している様式について、電算入力用に正本・副本以外にコピーを1部添付するものです。
新しく作成する書面や資料ではないため、電算入力用紙の準備は難しいものではありません。
「うっかり」と電算入力用紙の準備を忘れないように気をつけてください。
別とじ用紙のうっかり(東京都編)
もうひとつ東京都特有のものとして、別とじ用紙という定型用紙があります。
建設業許可申請書の添付書類の中に、個人情報保護の観点から一般に公開されないものもあります。
そして、それら一般に公開されない添付書類については、申請書やその他の添付書類とは別にとじて提出することになっています。
別とじ用紙とは、その一般に公開されない添付書類の表紙に当たるものです。
「うっかり」と決算変更届の納税証明書を提出する際に、お忘れにならないようお気を付けください。
副本朱印のうっかり(神奈川県編)
※「押印を求める手続きの見直し等のための国土交通省関係法令の一部を改正する省令(令和2年国土交通省令第98号)」により建設業許可申請・変更届における法定様式の押印は廃止されています。
※従って、今後は神奈川県においても本記事に記載のような「副本朱印のうっかり」は発生しなくなります。
神奈川県では、建設業許可の申請や変更届の押印について、他の行政庁とは異なる特徴があります。
神奈川県の場合、建設業許可の申請書類の正本だけではなく副本についても押印は、朱印したものとされています。
従って、建設業許可の要件への適合性や申請書類の記載内容に何ら問題がなくとも、副本の押印が朱印でなければ申請書は受理されません。
実質的に何も問題がないのに、とても悔しいですね。
「うっかり」と建設業許可の申請書類の正本を単純にコピーして副本を作らないよう気を付けてください。
申請窓口のうっかり(千葉県編)
千葉県の場合、建設業許可の申請・届出・相談窓口は千葉県庁ではありません。
千葉県知事許可に関する申請・届出・相談窓口は、建設業者様の主たる営業所を管轄する各土木事務所(総務課)となっています。
従って、千葉県知事許可を取得しようと千葉県庁に出向いても申請窓口はなく申請することはできません。
事前に、建設業者様の主たる営業所を管轄する土木事務所を確認の上、建設業許可を申請する必要があります。
「うっかり」と千葉県知事許可を取得されたいのに千葉県庁を訪ねられることのないようお気を付けください。
尚、千葉県内に主たる営業所を有する国土交通大臣の申請・届出・相談窓口は、千葉県土木整備部建設・不動産課になっています。
申請書部数のうっかり(千葉県編)
これに関連して、千葉県知事許可を取得されたい建設業者様は、申請書類を正本・副本・控の3部用意することになります。
「うっかり」と正本・副本の2部しか用意していないと土木事務所に申請を受け付けてもらえません。
建設業許可申請のうっかり(まとめ)
ここまで、建設業許可の要件に触れることのない、ちょっとした「うっかり」についてご説明してきました。
これらの「うっかり」によって、建設業許可を取得できなくなるわけではありません。
但し、再来等により申請手続は二度手間となってしまいます。
建設業者様のお時間も手間ももったいないので、注意して建設業許可の申請や変更届の準備に取り組んでいただければと思います。
そうすれば、「うっかり」を未然に防ぐことができます。
複雑で煩わしい建設業許可申請を乗り切りましょう。
それでも、建設業許可申請の手続が煩わしい、時間が取れないとお困りの建設業者様は、お気軽にお問い合わせください。
弊事務所では、建設業許可申請について、人的・組織的・物的・財産的要件の確認から、必要書類の収集、申請書の作成、行政庁への提出代行まで、手続全般をサポートしております。