- 特定建設業の「財産的基礎等」に関する要件って、どんな要件なの
- 特定建設業の財産的基礎の基準って、いつ時点の内容を確認されるの・・・
- 特定建設業の財産的基礎の基準で、期中に対応できることはあるの・・・
東京都の建設業許可の許可要件のひとつに「財産的基礎等」に関する要件を挙げられます。
建設業許可において「財産的基礎等」に関する要件を必要としている理由は、建設業は、建設工事の着手に際して、資材の購入、労働者の確保、機械器具等の購入等、大きな資金を必要としているからです。
そのため、建設業者様は、一定の資金を確保していないと(確保できないと)営業活動を継続的には行えないと考えられています。
言い換えれば、建設業者様は「財産的基礎等」に関する要件によって、建設業許可業者として継続的に事業活動を行っていけるのかを東京都に確認されていると言えます。
特定建設業の財産的基礎、期中増資した資本金(東京都の場合)
ところで、この「財産的基礎等」に関する要件は、一般建設業と特定建設業で許可要件の内容に大きな違いがあります。
特定建設業では、元請業者として下請契約金額の制限はなくなりますので、例えば、下請業者保護の観点から「財産的基礎等」に関する要件は厳しい基準となっています。
本記事では、特定建設業の「財産的基礎等」に関する要件について基本的な事項(法人の場合)を確認するとともに弊事務所にご質問の多い資本金の期中増資の取り扱いついてもご説明します。
特定建設業の財産的基礎要件って、どんな要件なの(法人の場合)
<特定建設業の財産的基礎>
- 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
- 流動比率が75%以上であること
- 資本金の額が2,000万円以上あること
- 自己資本の額が4,000万円以上あること
建設業者様は、特定建設業を取得したい場合には、上記4つの財産的基礎の基準を全て満たしていなければなりません。
従って、上記4つの財産的基礎の基準をひとつでも満たせない場合、建設業者様は特定建設業を取得することはできないのです。
【特定建設業の財産的基礎要件の計算式(法人の場合)】
事 項 | 法 人 |
欠損比率 | 繰越利益剰余金の負の額-(資本剰余金+利益準備金+その他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く))/資本金×100≦20% |
流動比率 | (流動資産合計/流動負債合計)×100≧75% |
資本金額 | 資本金≧2,000万円 |
自己資本 | 純資産合計≧4,000万円 |
※繰越利益剰余金のある場合や内部留保が繰越利益剰余金の負の額を上回っている場合、欠損比率ついては既に要件を満たしています。
※その場合には、欠損比率の計算式を用いる必要はありません。
それでは、上記の4つの財産的基礎の基準は、いったい何時の時点の財務データで東京都に確認されるのでしょうか。
特定建設業の財産的基礎要件、いつ時点の内容を確認されるの
特定建設業の財産的基礎の基準は、東京都への申請直前の確定した財務データ=貸借対照表(定時株主総会の承認を得たもの)によって東京都の審査を受けることになっています。
従って、建設業者様が任意に選んだ財務データ=貸借対照表を東京都の申請に使用することはできません。
また、決算の確定していない時点での財務データを使用することもできません。
ここで、建設業者様から弊事務所対してよくあるご質問について事例を用いてご説明させていただきます。
特定建設業の財産的基礎要件で、期中に対応できることはあるの
東京都の特定建設業を取得したい建設業者様より、財産的基礎の基準のうち、資本金の取り扱いについてご質問を受けることがあります。
建設業者様からの典型的なご質問としては、次のような内容となっています。
いっしょに考えていきましょう。
一般建設業の某許可業者様の事例:
現在、東京都の建築一式工事の建設業許可を取得しています。
但し、一般建設業となっています。
最近、商談の規模も大きくなってきており、特定建設業(般・特新規申請)にしたいと考えています。
営業所技術者等(専任技術者(専技))や配置技術者については一級建築施工管理技士や監理技術者も在籍しているので問題はありません。
特定建設業の4つの財産的基礎の基準については、資本金の額以外の3つの基準は満たしています。
資本金の額は、現在1,500万円で2,000万円を満たしていません。
特定建設業を1日も早く取得したいので期中の資本金の増額も検討しています。
ただ、財産的基礎の基準についてどうしても気になることがあります。
期中に資本金の増額を行っても、やはり今期の決算の確定までは、特定建設業(般・特新規申請)の取得はできないのでしょうか。
期中に増額した資本金:
さぁ、皆さんはどう思われますか。
確かに、特定建設業の財産的基礎の基準については、東京都への申請直前の確定した財務データ=貸借対照表(定時株主総会の承認を得たもの)によって東京都の審査を受けることになっています。
これを読めば、この建設業者様のように現在の決算の確定までは、特定建設業(般・特新規申請)の取得を待たなければならないことになります。
では、実際の東京都の特定建設業の財産的基礎の基準の運用では、どうなっているのでしょうか。
実は、特定建設業の4つの財産的基礎の基準の中で、唯一期中での数字を使えるのが資本金の額となります。
建設業者様は、東京都への申請前に資本金の増額を行うことで、特定建設業の財産的基礎の基準を満たすことは可能となります。
つまり、建設業者様は、期中に資本金の増額を行って、今期の決算の確定前に東京都に特定建設業(般・特新規申請)の申請を行えます。
但し、建設業者様の期中の資本金の増額を履歴事項証明書で確認できなければなりません※。
※特定建設業(般・特新規申請)の申請とは別に資本金の変更の変更届の提出も必要となります。
特定建設業の財産的基礎、期中増資した資本金(東京都の場合)(まとめ)
本記事では、特定建設業の「財産的基礎等」に関する要件について基本的事項を確認するとともに特定建設業を取得したい建設業者様よりご質問の多い「資本金の期中の増額の取り扱い」について説明しております。
建設業者様は、東京都への申請前に資本金の増額を行うことで、特定建設業の財産的基礎の基準の資本金の額の基準を満たせられることをおわかりいただけたと思います。
建設業者様は、期中に資本金を増額することで、今期の決算の確定前に東京都に特定建設業(般・特新規申請)の申請を行えます※1。
<まとめ>
- 特定建設業の財産的基礎の基準の中で資本金については、期中の増資でも認められる
- 但し、期中の増資による資本金の額は、履歴事項全部証明書で確認される※2
※1・2特定建設業(般・特新規申請)の申請とは別に資本金の変更の変更届の提出も必要となります。
東京都の特定建設業を取得したい建設業者様で、申請直前の確定した貸借対照表で資本金の額以外の3つの財産的基礎要件を満たしている建設業者様は、期中での資本金の増額のご検討をしてはいかがでしょうか。
弊事務所では、東京都の建設業許可に関して、新規申請にとどまらず、般・特新規申請、業種追加申請・更新申請等の各種申請について建設業者様に代わって申請を代行しております。
また、お忙しい建設業者様にとって、煩雑で後回しになりがちな各種変更届・決算変更届等についても代行で届出を行っております。
東京都の建設業許可に関してお困りやお悩みの建設業者様、建設業専門の弊事務所までお気軽にご相談ください。