- 特定建設業許可の取得には、新しい支店をつくらないといけないの
- 特定建設業許可を取得したら、いくらまで建設工事を受注できるの・・・
- 4,500万円以上の建設工事を外注する場合、特定建設業は必須なの・・・
- 一般建設業許可の取得は難しいけど、特定建設業なら取得できるの・・・
建設業者様の中には、新たに特定建設業許可を取得されたいとご相談に来られる方がいらっしゃいます。
そういった建設業者様は、これまでより工事規模の大きなプロジェクトや請負金額の大きな案件に参加されたいと積極的な事業展開をお考えのようです。
ただ、建設業者様からお話しをお聴きすると、特定建設業許可について少し勘違いされていることが多いと感じています。
例えば、一般建設業許可の許可業者様が特定建設業許可を取得するために、もうひとつどこかに営業所(支店)を開設しなければならないと思っておられることもあります。
また、下請業者様として元請業者様から大きな建設工事を請け負うことになり、自らも二次下請業者様に数千万円の規模の外注工事を発注しなければならず、特定建設業許可を取得したいと考えられる方もいらっしゃいます。
更には、一般建設業許可の許可要件を満たすことができず建設業許可を取得できないと言われたが、一般建設業とは違う特定建設業であれば取得できるのではないのかというご相談もあります。
特定建設業許可、よくある勘違い
確かに、建設業許可を取得するための許可要件や許可基準を理解することは難しく、よくわからないということも多いかと思います。
国土交通省や各都道府県の発行している建設業許可取得の手引書やHPを読んでも、直ぐに理解できる方はそうはいらっしゃいません。
日頃使わない言葉や難しい専門用語、正直言って誰でも取っ付きにくいものです。
そのため、特定建設業許可について、勘違いされる建設業者様がいらっしゃるのは当然のことと思います。
本記事では、弊事務所にて建設業者様のご相談を受ける中で、建設業者様が勘違いされることの多い特定建設業許可について「特定建設業許可、よくある勘違い」としてご説明していきます。
そもそも特定建設業許可ってどんな許可なの
特定建設業許可を考える上で、とにかく先ず初めに覚えていただきたいことがあります。
この1点だけでも、建設業者様の勘違いのかなりの部分を解決できます。
それは、特定建設業許可を必要とする建設業者様は、元請業者様に限定されているということです。
従って、下請業者様としてのみ建設工事を請け負っている方は、そもそも特定建設業許可を取得しなければならない義務はありません。
つまり、下請業者様である限り、特定建設業許可に必要とされている厳しい要件を気にする必要は何もないのです。
では、なぜ、特定建設業許可を必要とする建設業者様を元請業者様に限定しているのでしょうか。
それには大きな理由があります。
特定建設業許可を取得しなければならない場合として、総額4、500万円(建築一式工事の場合、7,000万円)以上の建設工事を下請に出すケースがあります。
実は、この条件は建設工事の発注者(施主)様の保護ではなく、元請業者様から下請工事を請ける下請業者様を保護しています。
建設業は、重層下請構造となっています。
そのため、元請業者様の経営状況や工事監理能力は、下請業者様の経営や工事施工に大きな影響を及ぼすことになります。
従って、4,500万円(建築一式工事の場合、7,000万円)以上の建設工事を下請業者様に発注する元請業者様には厳しい特定建設業の許可要件があり、各行政庁(国土交通大臣や都道府県知事)に経営状況や工事監理能力をチェックされることになります。
下請業者様への発注量の多い元請業者様にのみ特定建設業の許可取得がかされているのですから、下請業者様は特定建設業許可を取得する必要はないのです。
従って、下請業者様は、二次下請業者様に対する下請工事金額の制限を受けることはありません。
例えば、元請業者様より1億円の建設工事を下請として受注し、自社施工以外の7,000万円の建設工事を二次下請業者様に外注しても特定建設業許可を取得する必要はないのです。
※ただし、一括下請の禁止については、二次下請以降にも適用されますのでご注意願います。
特定建設業許可の厳しい技術者要件
また、特定建設業許可の取得には、いくつかの厳しい許可要件を充たす必要もあります。
その中のひとつとして専任技術者(専技)の許可基準が大変厳しいものとなっていることを挙げられます。
例えば、特定建設業許可の専任技術者(専技)になることのできる国家資格者は、原則として一級の国家資格となっています。
つまり、二級の国家資格をお持ちの方が建設業者様の社内にいらしても、そのままでは特定建設業許可を取得するための専任技術者(専技)にはなれません。
また、特定建設業許可の専任技術者(専技)の実務経験については更に厳しい許可基準となっています。
特定建設業許可においては、一般建設業許可の実務経験の許可基準をクリアーした上で、原則4,500万円以上の元請工事において2年(24ヶ月)以上の指導監督的な実務経験を必要としています。
この指導監督的実務経験とは、建設工事の設計または施工の全般について、元請の工事現場主任や工事現場監督等の資格で、工事の技術面を総合的に指導した経験となっています。
単に、建設工事の施工に携わっていた経験では、指導監督的実務経験と認められないのです。
※指定建設業の7工事業種(土木工事業・建築工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業・舗装工事業・造園工事業)では、指導監督的実務経験での専任技術者(専技)は認められていません。
特定建設業許可の厳しい財産的基礎要件
次に、特定建設業許可に必要とされる財産的基礎要件の許可基準についてもご説明します。
例えば、一般建設業許可の取得では、建設業者様は自己資本が500万円以上あることを各行政庁(国土交通大臣や都道府県知事)に証明しなければなりません。
では、特定建設業許可の取得には、どのような財産的基礎要件の許可基準をクリアーしなければならないのでしょうか。
特定建設業許可を取得するためには、一般建設業許可の財産的基礎要件をはるかに超える厳しい許可基準を全て満足しなければなりません。
<建設業者様が法人の場合>
- 欠損額が資本金の20%を超えてはいけません(①欠損比率の許可基準)
- 流動比率も75%以上でなければなりません(②流動比率の許可基準)
- 資本金も2,000万円以上ないと駄目です(③資本金額の許可基準)
- 自己資本が4,000万円以上必要となります(④自己資本の許可基準)
特定建設業許可を取得したい建設業者様は、申請直近の確定した貸借対照表で①~④の許可基準を満たしているか各行政庁(国土交通大臣や都道府県知事)に審査されることになります。
そして、この①~④の厳しい財産的基礎要件の許可基準を全て満足させないと特定建設業許可を取得することはできないのです。
特定建設業許可の取得においては、専任技術者(専技)の許可基準と並んで財産的基礎要件の許可基準も大変厳しくなっています。
特定建設業許可、よくある勘違い(まとめ)
特定建設業許可についてご理解いただけましたでしょうか。
特定建設業許可の取得や許可基準には、支店の増設、下請業者様の請負金額や再下請金額は直接関係ありません。
また、特定建設業許可は一般建設業許可よりも取得しやすいわけではありません。
むしろ、特定建設業許可の取得には、一般建設業許可の許可基準を満たした上で、更に厳しい許可基準をかされています。
①専任技術者(専技)の技術者要件や②財産的基礎要件は、特定建設業許可を取得するための典型的な許可基準となっています。
- 専任技術者(専技)の技術者要件
- 財産的基礎要件(4つの許可基準)
今回は、弊事務所にて建設業者様のご相談を受ける中で、建設業者様が勘違いされることの多い特定建設業許可について「特定建設業許可、よくある勘違い」としてご説明してきました。
特定建設業許可の取得についてご不明な点やわかりづらい点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
弊事務所では、建設業許可に関する各種申請や各種変更届について、お忙しい建設業者様に代わり代行申請しております。
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