東京都の建設業許可を取得するための最も重要な要件として、例えば、次の二つの要件を挙げられます。
- 常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))を常勤で設置する
- 営業所技術者等(専任技術者(専技))を営業所ごとに常勤で設置する
この二つの要件の難しさは、常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))の経営経験や営業所技術者等(専任技術者(専技))の実務経験の証明方法の難しさにあります。
令和4年度東京都の経営経験・実務経験の証明方法の運用変更
東京都より建設業許可の審査に関して「令和4年度建設業許可申請・変更の手引」にて大きな運用変更を公表しています。
それは、常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))の経営経験と営業所技術者等(専任技術者(専技))の実務経験の証明方法に関する運用の変更です。
具体的には、常勤役員等(経緯業務の管理責任者(経管)等)の経営経験や営業所技術者等(専任技術者(専技))の実務経験を無許可業者における経験証明で行う場合の証明方法の運用変更となっています。
本記事では、常勤役員等(経緯業務の管理責任者(経管))の経営経験や営業所技術者等(専任技術者(専技))の実務経験を無許可業者における経験証明で行う場合について、従来の証明方法と運用変更後の証明方法に分けて、詳しくご説明していきます。
経営経験・実務経験の証明方法(東京都の従来の運用)
常勤役員等(経緯業務の管理責任者(経管))や営業所技術者等(専任技術者(専技))の実務経験を無許可業者による証明で行う場合、証明書類は、次の通りとなっています。
<令和4年度の従来の運用>
- ①工事請負契約書(原本)※発注者の代表者の押印有
- ②注文書(原本)※発注者の代表者の押印有
- ③注文請書(写)+入金確認(通帳原本)
- ④請求書(控)+入金確認(通帳原本)
そして、これら証明書類の①工事請負契約書(原本)②注文書(原本)③注文請書(写)+入金確認(通帳原本)④請求書(控)+入金確認(通帳原本)のいずれかの組み合わせを1セットと考えます。
更に、原則として1か月につき1セットを用意することで1か月分の経営経験や実務経験の証明となります。
東京都の場合、これまでは窓口審査用として、1か月1セットを経営経験や実務経験の証明に必要となる月数分必要としていました。
具体的には、常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))の経営経験5年以上の場合には60セット以上、営業所技術者等(専任技術者(専技))の10年以上実務経験の場合には120セット以上の証明書類を必要としていました。
但し、実際の東京都の建設業許可申請時の提出物としては、窓口審査用として証明書類の中から年3~4セットの抜粋版を申請書類に添付する運用となっていました。
この提出用の証明書類は、連続した月のものではなく、間隔をあけて抜粋したものを申請書類に添付します(例えば、1月、4月、7月、10月等)。
このように、東京都の常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))の経営経験や営業所技術者等(専任技術者(専技))の実務経験を無許可業者の証明で行う場合、工事請負契約書等の証明書類を大量に用意しなければなりませんでした。
これは、近県等に比べて東京都の建設業許可の審査が厳密に行われ、実務経験による建設業許可の取得が大変難しいと言われる由縁のひとつと言えます。
今般、この常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))の経営経験と営業所技術者等(専任技術者(専技))の実務経験の証明方法の運用に大きな変更がなされたのです。
この常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))の経営経験と営業所技術者等(専任技術者(専技))の実務経験の証明方法の運用変更について、詳しくご説明します。
経営経験・実務経験の証明方法(東京都の新しい運用)
常勤役員等(経緯業務の管理責任者(経管))や営業所技術者等(専任技術者(専技))の実務経験を無許可業者による証明で行う場合の必要な証明書類については、以下となり、従前と変更はありません。
<令和4年度の新しい運用>
- ①工事請負契約書(原本)※発注者の代表者の押印有
- ②注文書(原本)※発注者の代表者の押印有
- ③注文請書(写)+入金確認(通帳原本)
- ④請求書(控)+入金確認(通帳原本)
つまり、経営経験や実務経験の証明に必要となる証明書類の種類については変更ないということです。
そして、これら証明書類の①工事請負契約書(原本)②注文書(原本)③注文請書(写)+入金確認(通帳原本)④請求書(控)+入金確認(通帳原本)のいずれかの組み合わせを1セットとしています。
更に、原則として1か月につき1セットを用意することで1か月分の経営経験や実務経験の証明となっています。
ここまでは令和4年度の運用変更前から特に運用変更された点はないようです。
では、東京都は経営経験や実務経験の証明方法について、どういった運用変更を行ったのでしょうか。
<従来の運用>
- 原則、証明書類を1月1件として、証明期間通年分を必要(証明期間5年分=60セット、10年分=120セット)
<新しい運用>
- 「経営経験・実務経験期間確認表」の提出をもって、証明書類の年月の間隔が四半期(3か月以内)であれば、間の証明書類の提出・提示を省略可
まとめます。
東京都の新しい運用では、無許可業者による経験証明の場合、常勤役員等(経緯業務の管理責任者(経管))の経営経験や営業所技術者等(専任技術者(専技))の実務経験の証明方法を次のように変更しています。
<新しい運用(まとめ)>
- 東京都の独自様式「経営経験・実務経験期間確認表」を提出
- 証明書類は従前と同じ
- 証明書類の年月の間を四半期(3か月以内)にした場合、その間の証明書類の提出・提示は省略可
この運用変更は、実際の東京都への建設業許可申請において、どのような意味を持つのでしょうか。
具体的な事例で確認していきましょう。
事例で考える(東京都の新しい運用)
例えば、ここに東京都の建設業許可(一般建設業・内装仕上工事)を新規取得したいと考える建設業者様がいらっしゃるとします。
そして、営業所技術者等(専任技術者(専技))の実務経験の証明を自社経験での10年実務経験として考えられておられます。
この建設業様は、次のような証明書類を準備されています。
◎ 平成23年1月の神田駿河台Aビル新築工事に伴う内装仕上工事の請求書と入金確認(通帳原本)
◎ 平成23年4月の駿河台Bビル大規模修繕工事に伴う内装仕上工事の請求書と入金確認(通帳原本)
従来の運用では、建設業者様は、平成23年1月と4月の間の実務経験を証明するためには平成23年2月と3月の請求書と入金確認(通帳原本)も準備しなければなりませんでした。
では、新しい運用の場合はどうなるのでしょうか。
◎ 東京都の独自様式「経営経験・実務経験期間確認表」に上記2工事の「年月・工事件名・工期(※)・請求書等・入金確認資料・通算」等の項目を記載して提出
これによって、平成23年2月と3月の請求書と入金確認(通帳原本)の東京都への提出を省略できます。
つまり、平成23年1月の神田駿河台Aビル新築工事に伴う内装仕上工事の請求書と入金確認(通帳原本)、平成23年4月の駿河台Bビル大規模修繕工事に伴う内装仕上工事の請求書と入金確認(通帳)の提出で、平成23年1月・2月・3月・4月の4か月分の実務経験を証明できることになります。
この運用変更により、東京都の建設業許可を取得されたい建設業者様の負担は大幅に軽減されることになります。
また、請求書等に工期が明記されている場合(※)、「経営経験・実務経験期間確認表」の工期欄にその工期を記載することで、工期の終期までの実務経験を認められることにもなっています。
このことは、仮に前の請求書等と次の請求書等の年月の間隔が3ヶ月以上離れていても、工期の終期から次の請求書等の年月の間隔が3ヶ月未満の場合、その間についても実務経験を認められることを意味しています。
東京都の新しい運用はいつから開始
東京都の経営経験・実務経験の証明方法の運用変更は、令和4年9月1日から運用開始となっています。
また、令和4年末までは、従前の証明方法による経営経験・実務経験の証明方法も認められていました。
令和5年1月4日(水)以降は、新しい運用=東京都の独自様式「経営経験・実務経験期間確認表」を用いた証明方法でのみ審査されています。
更に、令和6年以降においては、証明書類についても原本ではなく写のみ東京都に提出する運用に変更されています。
<令和6年以降の証明書類>
- ①工事請負契約書(写)※発注者の代表者の押印有
- ②注文書(写)※発注者の代表者の押印有
- ③注文請書(写)+入金確認(通帳(写))
- ④請求書(写)+入金確認(通帳(写))
令和4年度東京都の経営経験・実務経験の証明方法の運用変更(まとめ)
本記事では、常勤役員等(経緯業務の管理責任者(経管))の経営経験や営業所技術者(専任技術者(専技))の実務経験を無許可業者の証明で行う場合について、従来の証明方法と運用変更後の証明方法に分けて、詳しくご説明しています。
令和4年度の東京都の経営経験・実務経験の証明方法の運用変更によって、東京都の建設業許可を取得されたい建設業者様の負担は大きく軽減されたと言えます。
但し、常勤役員等(経緯業務の管理責任者(経管))の経営経験や営業所技術者等(専任技術者(専技))の実務経験の証明を不要としているわけではありません。
また、あくまで東京都の新しい運用は証明書類を省略できるだけであり、省略できる期間においても、常勤役員等(経緯業務の管理責任者(経管))の経営経験や営業所技術者等(専任技術者(専技))の実務経験を有していなければならないことは言うまでもありません。
つまり、建設業者様が許可要件を充たせるか否かの判断は、以前と同様に期間通年分の証明書類を収集した上で、慎重に内容を検討・確認していかなければならないのです。
その意味では、日ごろ建設業の営業や現場の施工管理や施工でお忙しい建設業者様にとって、建設業許可の申請が時間と手間の掛かる面倒な手続であることに変わりはありません。
弊事務所では、お忙しい建設業者様に代わり、東京都の建設業許可申請に関して、許可要件の確認、各種証明書類の収集、申請書の作成から提出代行まで一貫サポートを行っております。
東京都の建設業許可申請に関してお困りの、特に常勤役員等(経営業務の管理責任者(経管))の経営経験や営業所技術者等(専任技術者(専技)の実務経験の証明でお悩みの建設業者様は、弊事務所までお気軽にお問い合わせください。